opening interview
日本とフランスのファッション雑誌で、三ページにわたる特集が組まれた。
スポーツ誌には記事になって載った。
イタリアとイギリスのエンタメニュースでインタビューが放送された。
まだ少し小さかったけど、ネットニュースにもなった。
いい。
とてもいい。
今はまだ、これでいい。
『僕』の名はこうして少しずつなりとも、ひとまず
ただし、『ひとまずは』だ。
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ソロデビューおめでとうございます、YOSSYさん。
有名サーカス団である『レーヴ・サーカス』退団のニュースは、フランス国内でも衝撃だったと思います。その後の活動を単身で、それも
YOSSY「そうですね。若いうちに出来ることというのは限られていますから、そろそろパフォーマンスレベルを次のステージへと進めてみようと思ったんですよ」
次、というのは、もしかして何か具体的な構想がおありですか?
YOSSY「構想、とまではいきませんが、変わらない目標はいつだって持っていますよ。僕はそこへ向かって
変わらない目標?
YOSSY「世界を笑顔で満たし、そうして美しく変えること。これが僕のパフォーマンス理念であり、人生テーマなんですよ」
はい、戴きましたそのお言葉!
YOSSY「アハハ、ご存知でした?」
はいもちろん。私もYOSSYさんのファンですから。
YOSSY「
今後は、母国である
YOSSY「機会や、僕を求めてくださる声があれば、僕はそれこそボーダーレスに飛び回る心づもりですから、日本にも帰ることはあると思いますね」
ご家族も喜ばれることでしょう。
YOSSY「アハハ、そうだといいのですが」
さて、この度有名ブランド『
YOSSY「そうなんですよ、光栄なことです。当初はお受けするのをためらっていたのですが、古参ファンだと評していただけたのと、それこそサーカス団員の仲間から推されまして。踏みきらせていただきました」
今日のお召し物も『OliccoDEoliccO®️』ですし、そちらのスーツは最新コレクションからでしょうか?
YOSSY「そうなんです。しかも、僕に似合う色で作っていただけました」
YOSSY「今年度の二月に行われるコレクションにて改めてお披露目になります。他のカラーリングもあるとのお話。ぜひお楽しみに」
YOSSYさんの髪色であるブルーアッシュにも、愛用サングラスのレンズ色のブルーグレーにもよく馴染んでいて、やっぱり絵になりますね。本当に素敵です!
YOSSY「これでも、初めに『OliccoDEoliccO®️』で惚れ込んだのは革靴だったんですよ。その次に、このサングラス。靴はさすがに裏が減ってしまったりして代替わりはしてますが、どちらも未だに手放せません」
そうだったんですか。
YOSSY「このレンズ色は今ではもう出してないので、もしお手元にあるならばプレミアものですよ(笑)」
ファンであれば、手にしてみたい代物でもありますね。ありきたりな質問かもしれませんが、ずっとサングラスをお掛けなのには、何か理由があるのでしょうか?
YOSSY「ハハ、秘密です」
そんな秘密を知りたくなるのが、ファン心理ですが(笑)。あ、これはいちファンとしての独り言です。
YOSSY「(笑)そうですねぇ、では少しだけ。実は、コンプレックス隠しなんですよ」
コンプレックス、ですか。こう言ってはなんですが、世界のYOSSY the CLOWNにもコンプレックスがあるのでしょうか?
YOSSY「そりゃあ人間誰しも、大なり小なりコンプレックスはあるものですよ。僕は普段からこうして隠してはいますが、それがむしろトレードマークになっている。これはとてもポジティブな変革だと、僕は思うわけです」
確かにそうですね。ちなみに、私のコンプレックスは、このそばかすです。
YOSSY「ええ? そんなにチャーミングなのに?」
もう、これだからYOSSY the CLOWNのファンは止められないんですよ!
YOSSY「まぁ、僕のはお披露目しませんけどね(笑)」
それはファンとしても記者としても、残念です(笑)。
YOSSY「僕は、コンプレックスと上手く付き合っていくような『希望』を伝えることもしたい。どんなコンプレックスも、誰かにとっては羨ましいものかもしれない。独りでは作れない可能性を、僕は世界へ伝えて見つけに行くわけです」
なるほど。YOSSY the CLOWNならではの切り口と価値観だと思います。では最後に、今後の活動についての意気込みなどお願いします。
YOSSY「僕の夢は、実はまだまだ始まったばかりです。僕はこれからも数多の舞台から世界の
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「チッ、クソ。相変わらずのキザ野郎が」
舌打ちと共に、悪態の色で吐き捨てる彼。
ドザ、と雑誌を放った音が、大量の紙に埋もれた事務机の上に重なった。
「
胸元から取り出すは、よれたタバコ一本。わずかに湿気っているそれは、しかし彼にとっては関係ない。
「それは俺も──」
思わず漏れた『続きの言葉』。気が付くなり、ぐしゃぐしゃと赤茶けた髪の毛をかき混ぜる。自らの考えに感情を揺さぶられることは、彼を無性に苛立たせた。
よれたタバコを
事務所の窓は雨の跡が白く残り、固着し、いびつな波形を幾重にも描いている。これを美しく磨き上げることを、彼はしない。
「…………」
タバコの先端からは、白い煙が細く伸びる。
寄った眉間は、彫り深く彼の顔面に刻まれたまま。
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