第82話 命を削る戦い

 なんてことなの……。

 住民の生命力をダークマターに変換するなんて。


「民にまで手をかけおって! 貴様どこまで腐っておる!!」


「うるさいジジイねぇ……今は私がユニオンマスターなのよ? 私が支配者なのよ? 住民共をどう扱おうと私の勝手だわ」


「ふざけるでない! 貴様は民をなんだと思っておるのだ!!」


「何って……ただの資源かしら? 資源なんだから、せいぜい私の為に生命力を捧げていればいいのよ」


 ……言葉が出ない。

 酷い……酷すぎるよ……。


「……ワタクシの……お父様とお母様は……?」


「フフフッ……そういえば、あなたの両親もコールドスリープに放り込んだわねぇ。今頃は生命力を絞りとられて、カラカラになってるんじゃないかしら?」


「ううぅ……お父様……お母様……」


「エルリンや、気をしっかり持つのじゃ」


「理解しなさい、もはやフローンの住民に未来はない。そして、あなた達に勝ち目もないのよ!」


 マズい! ダークマターの圧力が跳ねあがった!!


「ダークマター! 連中をまとめて押しつぶしなさい!!」


 ワープ! それからバリアー!!

 急いで!!


「ぬぉっ!? お嬢ちゃん、いつの間にワシの前へ?」


「私の後ろから動かないで!!」


 つっ……強いっ……!

 スプリィムのダークマター、さっきまでとは比べ物にならない強さだ。

 全力で防御しても押されちゃう。


「アハハハッ、いいのかしら? 私と戦えば、それだけ住民の命を削ることになるのよ?」


 くうぅっ……スプリィムを止めないといけない。

 だけどスプリィムを止めようとすれば、もっと多くの住民の命を削られちゃう。

 そして、今こうしている間にも、住民の命は削られてる。

 どうすればいいの?


「ほらほらぁ! もっとしっかり守りなさい!!」


「くっ……ぐぐぅ……」


「もっと追い詰めてあげるわ! そぉらっ!!」


「あぁっ……うぅ……っ」


 ダメだ……どんどん追い詰められてる……。


「バリアーにヒビじゃ! お嬢ちゃん、しっかりするのじゃ!!」


「ダメ……もう限界……っ」


 やっぱり戦えない……。

 人の命を削る戦いなんて、私には出来ないよ……。

 チコタン……ミィシャン……エルリン……おじいちゃん……。


「さあ! トドメを刺すわよぉ!」


 皆……ごめんね……。


 私……もう……。


《インストール、完了しました》


「……あら?」


「えっ……今の声は?」


 スプリィムの力が弱まった。

 危なかった、もう少しでやられちゃうところだったよ。

 今の声に気をとられたのかな? 一体なんの声なの?


「あそこじゃ! あの水槽から声がしておる」


「水槽?」


 ホントだ、水槽が浮かんでる。

 光っててよく見えないけど、中に何か入ってるみたい。


《ロック解放します》


 水が溢れて……中から何か出てくる……?


 あれは……。

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