第61話 巨大なタピオカ

「ふニャァ……凄いナ……」


「はい……凄いですね……」


 フローンに到着して一夜明けて、今日はヴェーゼ攻略の作戦を立てる日だ。

 朝の早い時間を狙って、ヴェーゼ本部の偵察に来てみたんだけど……。


「あれがヴェーゼの本部……」


「そうですわ、あそこで第三ウェーブの全てを統括していますの」


 金属のクレーター。その上に浮かぶ黒い球体。

 大きな銀のお皿の上に、巨大なタピオカが浮いてるって感じかな。

 大きすぎて端っこの方は霞んで見えるよ。ラハルの本部タワーと比べると、けた違いの大きさだ。


「バリアーに包まれてるニャ……ボクにも見えるヨ」


「あの大きさの物体を空中に浮かせて、更にバリアーまで張るなんて……想像もつかないほどの技術力です」


「ヴェーゼ本部は機械制御によって常に空中に浮いていますの。バリアーはダークマターによるもので、こちらも常に展開されていますわ」


 常にダークマターでバリアーを張るって……正直信じられないよ。

 どうやってダークマターを維持してるんだろう?


「見ての通り全方位バリアーによって完全防御されていますわ。物理的な衝撃だけではなく、空間転移すらはね返してしまう超高精度バリアーですの」


 空間転移もはね返す?

 ということはワープも無理ってことか。


「侵入するだけでも苦労しそうですね……」


「そもそも侵入出来るのかナ?」


 私も同じことを思ったよ。

 侵入すら出来なさそうだけど……。


「エルリン、本部に侵入する方法はあるの?」


「本部職員でしたら専用のワープゲートから入れますわ。職員でない者は……」


「職員でない者は?」


「力技の強行突破で、バリアーを突き破るしかありませんわね」


「「「強行突破!?」」」


 いやいやエルリン! お姫様みたいな顔して、過激発言すぎるでしょ!?

 超高精度バリアーじゃなかったの?


「突き破るって……そんなこと可能なのですか?」


「理論上は可能ですわ。バリアーの強度を上回る物理的な衝撃と、ダークマターによる激しい干渉を同時に加えれば、バリアーを破れるはずです」


「うナナ……それってどれくらいの衝撃ナ?」


「そうですわね……“高密度のダークマターをまとった隕石が直撃する”くらいの衝撃ですわね」


 ダークマターをまとった隕石が直撃って……そんなメチャクチャな……。

 ん? 待てよ……ダークマターをまとった隕石か……。


「それって現実的なのでしょうか?」


「いえ……不可能に近いですわね……」


「それじゃあワープゲートを使った方がいいかニャ?」


「ワープゲートのセキュリティはとても厳重ですの、潜り抜ける術はありませんわ……」


「打つ手がない、ということですね……」


「「「……」」」


 皆黙り込んじゃったよ。

 現実的な方法じゃないもんね、でも……。


「ねえ、もしかしたら侵入出来るかもしれないよ」


「うナ? 本当かニャ?」


「それは……いくらソーラでも難しいのでは?」


「下手に侵入しようとすれば、捕まるリスクを増やすだけですわ」


「だったら下手に侵入しようとしなければいいよ、つまりね……」


「「「つまり?」」」


「やるなら思いっきりやっちゃおうってこと!」 


 こういうものは思い切りと勢いが肝心なの!

 女は度胸! ためらわずにやっちゃうのよ!!

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