第12話 一緒に

「はぁっ……はぁっ……ゴメン、我を忘れてた」


「はァッ……はァッ……怖かった、もうやめてよネ」


 私ってば、いつの間にかモフモフの魅力にとりつかれてたみたい。

 ミイシャンのしっぽを追いかけてお風呂中を走り回ってたよ。


 モフモフの魅力、恐るべし!


「それで、ソーラ達はどうしてこの星ニ? どうやって降りてきたんニャ?」


 うーん、正直に言っていいのかな?

 まあでも、話したところで状況が悪くなることはないよね。

 よし、全部話しちゃおう。


「信じられないかもしれなけど、私は元々地球人なの」


「地球人ン?」


 まあビックリするよね、でもとりあえず聞いてもらおう。


 私が元々地球人だったこと。

 宇宙人に攫われたこと。

 宇宙人の体になったこと。

 チコタンとユイタソちゃんの敵討ちのこと。

 私が特異点であること。

 ダークマターのこと。


 それから、どうやってこの星にやってきたのか。

 思ったより話が長くなっちゃった。改めて思ったけど信じられない出来事だらけだよね。


「ニャっはっハ! 面白いナ!!」


 面白い!? それはまさかの感想だよ。

 今の話で爆笑されるとは思わなかった。


「ちょっと! こっちは死ぬ思いだったんだから!」


「ゴメンゴメン、悪気はないかラ」


 て言いながらまだ笑ってるじゃん。

 涙まで浮かべて、そんなに面白かったのかな?


「この星って昔の遺跡や機械が転がってるだけで凄く退屈なんダ。後は原始的な動植物が沢山生息してるだけの星なんニャ。それにずっとボク一人。だから、ソーラの話は聞いててワクワクしちゃったヨ」


 そういうこと……それにしても笑いすぎでしょ。


「あれ? この星ってミィシャン以外は誰もいないの?」


「いないよ、昔はボクとおじいちゃんの二人で住んでたけど、もう死んじゃったからネ。今はボク一人、だからホントに退屈なんダ」


 この広い星にたった一人って、それは退屈だよ。そして寂しいよ。

 ミィシャンは明るい性格なんだね。


「ところで、ソーラ達はこれからどうするつもりニャ?」


「私の体を取り返したいな。あとはチコタンとユイタソちゃんの敵討ちもしたい」


「だったら宇宙にいく必要があるネ」


 やっぱりそうだよね。

 でもどうすれば宇宙にいけるのか、サッパリ分からないよ。

 ダークマターでなんとか出来るかな?


「ボクも宇宙に出たいんだけど、そう簡単にはいかなくてサ。この星は第三ウェーブの端っこで、ほとんど宇宙船も来ないかラ」


「第三ウェーブ?」


 なんだろそれ、はじめて聞く言葉だけど。


「第三ウェーブというのはですね」


 お、チコタン復活した。

 ずっと黙ってたから心配してたよ、こっちにきて一緒に話をしようよ。

 カワイイヌードを私に見せてよ。


 ってあれ?

 ちょっと待って……うわぇっ!?

 チコタンにもしっぽが生えてる!


「第三ウェーブというのは、ダークマターの波の一つことです。ダークマターは宇宙全体で七つの大きな波を形作っています。その七つをヴェーゼが切り分けて管理しているのです。第三ウェーブもそのうちの一つです」


 チコタンにしっぽが生えてるなんて、全然気づかなかった。

 小さくピョコっとしてるだけから、服の上からだと分からなかったんだ。


「ちなみに地球も第三ウェーブに含まれています」


 チコタンのしっぽ、ピョコピョコ動いてる!

 モフモフはしてないけど、これはこれでカワイイがすぎるでしょ!!


「ソーラの体を取り戻すのでしたら、惑星ラハルに行く必要がありますね」


 触りたい……チコタンのしっぽ……。

 ついでにスベスベのお肌も触りたい……。

 ウズウズしすぎて体が震えてきた……。


「ゲスーチが転送前に言った言葉を覚えていますか?」


 ん? チコタンにしっぽがあるっていうことは、まさか私にも!?


「ソーラ、聞いてますか?」


「あっ、えっと確か……本部に転送って言ってた!」


「そうです、第三ウェーブのヴェーゼ本部は、ラハルという惑星にあるのです」


 セーフ!

 ギリギリ話聞いててよかった、しっぽのことは一旦忘れよう。

 大事な話だし、もっとちゃんと聞いておかなくちゃ。

 つまりラハルっていう惑星にいけば私の体もあるし、あのゴミクズもいるってことね。


「惑星ラハルにいくならボクも連れていってヨ!」


「ミィシャンも?」


「惑星ラハルといえば、第三ウェーブでもトップクラスの文明惑星でショ? 一度いってみたかったんニャ!」


 一人で退屈してるって言ってたもんね。

 まあ、気持ちは分かるけど。


「危険です、敵はヴェーゼなのですよ?」


 そう、正直危険だと思う。

 退屈だからってついてくるような場所じゃないよ。


 でもモフモフなミィシャンと一緒に宇宙旅行か……控えめに言って最高かも。

 ああ、悩ましいっ。


「じゃあソーラ達、この星から脱出する手段はもってるのかナ?」


「いえ、それはもっていませんけど……」


「ボクだったら宇宙船の場所まで案内出来るヨ、それに操縦も出来ル」


「本当ですか? だとしたら凄く助かりますが……」


 なるほど、この星で唯一の住人が宇宙船の場所を知っていて、更に操縦も出来る。

 これはもう運命としかいいようがないね。

 モフモフと一緒に宇宙旅行をしなさいって神様が告げてるんだよ。


 だったら仕方ないよね、うん。


「ミイシャン、一緒に宇宙へいこう!」


「そうこなくっチャ! もちろんニャ!」


 よし!

 いざ、モフモフと共に宇宙へ!!

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