第5話 ゴミ以下の組織
「その体は二日前に亡くなった私の親友、ユイタソのものなのです……」
……え? 亡くなった?
「それって、死んじゃったっていうこと?」
「はい、私と一緒にヴェーゼの研究員見習いをしていました」
そっか、それはビックリするはずだ。
だって死んだはずの親友がいきなり起きて、しかもお腹鳴らしてるって。
あぁ、思い出したらまた恥ずかしくなってきた……。
「ソーラが
実験? ユイタソちゃんを使って?
つまり、人体実験をした? それでユイタソちゃんは死んじゃったってこと?
「ユイタソの遺体は私が預かっていたのです。家族の元へと帰してあげたくて、亡くなった状態のまま保存していました。そこに、心身分離術で体から切り離されたソーラの精神が流れてきて、空っぽだったユイタソの体に宿ったのだと思います」
は?
いやいや……。
何言ってんのこの子?
「ゴメン、まったく意味分かんないだけど……」
「そうですよね……勝手に
「違う! そうじゃないでしょ!!」
「ひゃひっ!?」
あー、もう無理!
マジで信じられない。
我慢の限界だわ。
「私のことを言ってんじゃないの! 実験台にされたって? それって親友が実験で殺されたってことでしょ? なのにどうして平気な顔してるの? 悲しくないの? 悔しくないの?」
「でも、私はただの見習いだから……」
「そんなこと関係ないでしょ! ユイタソって子、親友だったんじゃないの!?」
なんなの? 宇宙人って感情が無いの?
人体実験で親友が殺されて、それなのに淡々と話して。
ムカムカしすぎて手が震えてきた。
喜怒哀楽のある地球人の方が百億倍マシだよ!
「──ですか──」
「ん?」
「悲しくないわけないじゃないですか! 悔しくないわけないじゃないですか!! 子供の頃から親友だったんですよ、一緒に立派な研究員になろうって約束もしてたんです! 離れた場所で働くことになっても、お互いに家族を持っても、ずっと親友でいようねって約束してたんです!!」
……。
「本当は……本当は私が実験台になるはずだったんです。でも私怖くて、そんな私を見てユイタソは自分から実験台を引き受けてくれたんですよ」
……。
「優しくて、頼りになって、いつも助けてくれたんです! あの時私が怖がったりしなければ……うぅ……ユイタソは死ぬこともなかったんです」
……。
「ずっと一緒だと思ってました。それなのに、ぐすっ……こんなところで死んじゃうなんて……ユイタソ……」
「……なんだ、ちゃんと感情あるじゃない」
宇宙人と地球人、見た目は違うけど心は同じ。
大切な誰かを失ったら悲しいし、悔しい。こうして涙だって流す。
そこに違いなんか全然なかった。
よし、決めた!
地球に帰りたいとか、家族に会いたいとか色々あるけど、それは全部後回し。
先にやることができたからね。
「あなた、名前は?」
「……チコタンです」
「チコタン、いい名前だね」
……カワイイ名前。
いや、それは一旦置いておこう。
「チコタンは、ヴェーゼとかいう連中に大切な親友を殺された。そして私は、大切な体を奪われた」
「はい……でもヴェーゼは宇宙を統一している巨大組織です。私達ではどうすることも出来ません……」
「宇宙を統一? そんな小さいこと気にしないの!」
ヴェーゼだかなんだか知らないけどね、人の大切なものを平気で奪うやつはゴミ以下よ!
巨大組織? ああそうですか、それが何か?
「そんなゴミ連中、私が吹っ飛ばしてやるわ!!」
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