第4話 なんで私、宇宙人になってるの?

 なっ。


 なななっ。


「何これ!? めっちゃ美味しい!!」


「よかったです、お口にあったようで」


「もぐもぐ……うまうま……」


「まだあるので、遠慮せずに食べてくださいね」


 ああ、この宇宙人ちゃんホント天使様っ!

 宇宙人ちゃんが出してくれた、白くてプルプルしてるナゾの物体、正直見た目はかなり気味悪いんだけど、でもこれめっちゃ美味しいの!

 味も食感も香りも最高。なんていうか、この世の美味しさを一点に凝縮したような感じ!

 ほっぺたがとろけ落ちそう。


「あの、ところで……」


「ん? もぐもぐ……何? うまうま……」


 ヤバい、美味しすぎて手が止まらない。


「あなたはユイタソ……で間違いないですよね? 凄く違和感があるのですが」


「ユイタソ? もぐもぐ……何それ? うまうま……」


「ユイタソは私のお友達ですよ。それを知らないということは、あなたはユイタソではないのですか?」


「へえー、もぐもぐ……私はユイタソちゃんじゃなくて、うまうま……明峰空あけみね そらだよ」


 このうちゅカワイイ女の子は、ユイタソちゃんっていう宇宙人なわけね。

 それじゃあどうして私は、ユイタソちゃんの体で動き回ってるんだろう?


「アケミネ・ソーラ? まさか、特異点の!?」


「特異点? もぐもぐ……どこかで聞いたような……うまうま……」


「はぁ、ユイタソが生き返ったのかと思ってビックリしました。きっと心身分離術の影響が出たのですね」


「心身分離術? もぐもぐ……」


 言葉の意味は分からないけど、嫌な予感のする響きかも。詳しく聞いておいた方がいいのかな……。

 ただホントに手が止まらない。宇宙の食べ物って全部こんなに美味しいの!?


「心身分離術というのはですね──」


「ちょっと待って、もうちょっと食べさせて、もぐもぐ……」


「あ、はい。ごゆっくりどうぞ」


 うわぁ、凄い呆れ顔されちゃったよ。視線がじっとりしてる。

 でもゴメンね宇宙人ちゃん、美味しすぎて手が止まらないんだ。


「とりあえず、もぐもぐ……私は地球人なんだけど、うまうま……どうして宇宙にいるのか分かってなくて、もぐもぐ……そこらへんを知ってたら教えてもらえる? うまうま……食べながら聞くから」


「はい、それでは地球人のアケミネ・ソーラさんにも分かるように、順を追って話しますね」


「その前に、私のことは呼び捨てでいいよ。それと、ソーラじゃなくて空だから」


「分かりました、ではソーラと呼びますね」


 あれれ? 結局ソーラって呼ばれてるよ。

 もしかして空っていう名前、宇宙的には発音しにくいのかな? 別にソーラでもいいんだけど。

 ところでこっちの赤いプルプル、これもめちゃくちゃ美味しいじゃない!


「地球人のソーラは知らないと思いますが、宇宙にはダークマターと呼ばれる物質があります。宇宙において最も万能にして無限に使えるエネルギーです」


 あぁもう美味しすぎる! 万能にして無限にいけちゃう食べ物だよ。

 ってダメダメ、プルプルにとらわれ過ぎてる、ちゃんと話に集中しなくちゃ。


 えっと、ダークマターっていうものがあるわけね。

 ゲームでいう魔力とかマナとか、そういう系のものかな?


「宇宙ではごく稀に、ダークマターを無限に操れる適性を持った存在が生まれます。私達は“特異点”と呼んでいます」


 特異点か、つまり勇者とかヒーローみたいな、選ばれし存在ってことね。宇宙規模のチート使いっていう感じかな?


「私達の調査によると、今現在の特異点はソーラ、あなただと判明しています」


「ぷふぁっ! 私!?」


「そうです、それを知って全宇宙の統一機関“ヴェーゼ”は、特異点の力を手に入れようとしました。そして先日、ソーラを地球から拉致アブダクションしたのです」


 あ、ビックリしすぎて食べるの忘れてた。

 でもそっか、私が宇宙規模のスーパーチートだったから、ヴェーゼとかいう連中に狙われたってことか。もしかして私、宇宙規模でモテてるの?


「ヴェーゼはソーラに心身分離術を施しました。心身分離術とはその名の通り、精神と肉体を切り離す術式です。ヴェーゼは特異点の力を持つ体だけを欲していました。なので、体だけが回収されて、精神は放り捨てられたのだと思います」


 精神と肉体を切り離す、か。宇宙の技術力ってそんなことも出来るんだ。

 で、私の体は欲しかったけど、心は必要なかったからポイしちゃったと。

 なるほどねー……


「って何それ! 私の都合ガン無視じゃない!!」


「ひゃわっ」


 おっと、つい大きな声が出ちゃった。


「ひいぃ……おっしゃる通りですぅ……」


「ゴメンゴメン、ちょっと取り乱したけど、もう大丈夫だから」


 なんで私が宇宙にいるのか、一応理由は分かったよ。

 正直信じられないけど、実際に来ちゃってるんだから信じるしかないよね。


「事情は分かったよ、それでさ」


 今の説明って肝心なところが抜けてるよね?

 そこを説明してもらわないと。


「なんで私、宇宙人になってるの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る