月に願いを(月の野うさぎさま:彼と彼女の場合)の弐

<おねえさん、起きて>

 そう話しかける声がする。 浅い眠りの中で彼女は微睡んでいる。

<おねえさんってば!>

「なによぉ、もう!」

 目を擦りながらもまだ横になっている。急に

「あ、やばっ!遅刻する!!」

 彼女は途端に起き出した。目覚まし時計を慌てて手にする。時刻は朝の7:30前を指し示している。しかし今日は土曜日で休みだ。

「今日は休みだったんだわ。よかった」

 二度寝の体制を整え再度布団を被った。

「ん?」

  辺りを見渡す。枕元に何かしらの気配を感じた。

「うあ!」

  そこには「野うさぎたち」が佇んでいる。

<おはよう、おねえさん>

「はぁ?だれ?」

 彼女は重度の近眼。メガネを掛けて再度枕元を振り返って見遣る。

「ああ、あななたち。なによ、朝っぱらから」

 寝起きなので少々機嫌が悪いようだ。

<あれから2日経ったから、おねえさんの願いの中間発表を伝えに来たよ>

「あら、あなたたちにお願いなんてしたかしら」

<覚えてないの?>

「うーん、何だっけ?」

<郵便受けに白いかけらがあったでしょ?>

「ええ、あ、思い出したわ。男性の件ね?」

<そうだよ。それで相手は見つかったよ>

「早いわね。それでどうなるの?」

<相手を見つければいいだけだよ>

「え?自分で見つけるってこと?」

<そうなるね。でも見つければお付き合い出来ることになってるよ>

「へぇ~、そうなんだ。でも探し方がよくわからないわ」

<そこで、あの白いかけらを使うんだよ>

「どうやって?」

<そこは自分で考えないとね>

「うーん、よくわからないけど、まあいいわ。やってみる」

<うん、がんばってね>

「わかったわ。じゃ寝るわ」

<あらら、おつかれなんだね>

くすくす笑いながら「野兎たち」は空に消えていった。

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