第27話 謎解き成功
「ちょっ、センパイッ!? 大丈夫ですかぁ!」
「いつつ……タライかよ……」
「あはっ、ナイスリアクションでしたよセンパイ!」
「……うっせぇよ」
芸人じゃあるまいし、褒められてもまったく嬉しくねえ。
「あ~しかもタライの角が当たったし。ったく……けどやっぱ罠だったか」
「下ろしたスイッチも勝手に戻ってしまいましたねぇ。もしかしたら本当に正解のスイッチがあるかもしれませんよぉ?」
「もしくはスイッチを下ろす順番とかあったりな」
「あ、それも王道ですねぇ。……どうします?」
「こうなったら全部確かめたいところだが効率も悪いしなぁ。何かヒントになるようなもんがありゃ良いが……」
「他の階にもこんな部屋があるかもしれませんよ?」
「……確かにな」
一理あると思い、俺たちはスイッチ部屋を後にして、すぐに二階へと上がっていった。
遭遇するモンスターを倒しつつ部屋を物色していくと、またも奇妙なものを目にする。
「…………〝マル印〟……?」
「ですね。そういえばさっきは〝バツ印〟でしたよねぇ?」
「ああ、やっぱり何か意味が……! もしかして……」
「何か分かったんですかセンパイ?」
「いや、まだ確証はねえな。とりあえず三階に行くぞ」
「へ? で、でもまだ他の部屋も残ってますよぉ?」
「いいから、今は確かめたいことができた」
俺は彼女を引き連れて、すぐに三階へと上がり、一つずつ部屋を調べていく。
そしてここは最後に調べた部屋に――。
「ここにも……〝マル印〟ね」
壁一面いっぱいに描かれたマルを見て、俺の考えの正しさが徐々に信憑性を増していく。
次に四階へ向かい、ここにもやはりある一室には印が刻まれていた。
「四階には〝バツ印〟か。よし、次は五階だ」
「ちょ、もう! そろそろ説明してくださいよぉ」
何も言われないことに不満を覚えたのか、脹れっ面で近づいてくる姫宮。
「まだ確定じゃないが、このビルにはフロアごとにマルかバツかの印が刻まれている」
「そうですけどぉ……それが何か?」
「一階にはバツ、二階と三階にはマル、そして四階にはバツ。多分これが一階にあったスイッチの謎を解くヒントになってるんだ」
「? どーゆうことですぅ?」
「スイッチには番号が記されてただろ?」
「はい。それが……って、もしかして!」
どうやら彼女も気づいたようだ。
「そうだ。恐らくあの番号は、それぞれのフロアを示してるんだよ」
一階→1 二階→2 三階→3
こんな感じだろう。
「じゃあマルやバツって……」
「マルの方はスイッチを下ろす。バツは下ろさないってところだろうな」
「なるほどです……そういう仕掛けだったんですね。……ん? ちょっと待ってくださいセンパイ。確かこのビルって五階建てですよね?」
「ああ、そうだな」
「だったら足りませんよぉ! 六の番号のフロアはどこにいったんですかぁ!」
「おいおい、ちゃんとあるだろ」
「ふぇ? ……どこに?」
「――屋上だよ」
五階にもやはり印があり、〝バツ印〟が刻まれていた。
そして俺たちは、非常階段用の扉から外へと出て、そこから屋上へと上がっていく。
するとそこには一際大きなモンスターが待ち構えており、まだ俺たちには気づいていない様子。
「《鑑定》によるとオークジェネラルってやつらしいですけどぉ、コアモンスターみたいですねアレ。倒しちゃいますぅ?」
オークの上位種で、楯と剣を持ち鎧まで装備している攻防に優れたモンスターだ。レベルも20とやや高い。今までのモンスターと比べても、明らかに質が違うのでコアモンスターなのは間違いないだろう。
「いや、倒したらダンジョン化が解けて、さっきのスイッチも消えるんじゃねえか?」
「あ……じゃあどうします?」
「とにかくこの階にある印を見つけなきゃな。怪しいのは……あそこの小部屋か?」
物置小屋なのか知らないが、プレハブのような建物が視線の先にある。
だが鬱陶しいことに、オークジェネラルが、その小屋の近くに陣取っている。
「俺が奴を引きつけるから、お前は隙を見て小屋の中を探索だ」
「OKですぅ!」
俺がそのままオークジェネラルへと接近すると、当然俺に気づいた奴は敵意を剥き出しにしてくる。
だが俺は戦闘することなく、非常階段の真逆へと走り出す。
オークジェネラルもまた、俺を追ってゆっくりと距離を詰めてくる。
俺は「今だ」と、姫宮に目配せをすると、彼女はフワフワと浮かびながら静かに小屋へと近づき中へと入っていった。
よし、あとは時間を稼ぐだけだな。
「ブフォォォォォッ!」
対してオークジェネラルはやる気十分なようで、盾を構えながら突進してきた。そして俺に近づきつつ、剣を振るって攻撃してくる。
俺も応戦するために、《新羅》で攻撃を受け止めた。
刃物同士が火花を散らし、俺とオークジェネラルは互いに顔を突き合わせる。
いつもならこのまま【死線】でイチコロなんだけどなぁ。
しかし今はそういうわけにはいかない。
俺は完全に防戦一方というスタイルを取って、相手の攻撃を捌いていく。
すると小屋から姫宮が出てくる姿を見た。彼女は俺に向かってグーサインを送ってきた。
「さて、じゃあお前のあとはまた後で……だっ!」
盾に向かって蹴りを飛ばし、その勢いでオークジェネラルを吹き飛ばす。
そのまますぐに非常階段へと走り、姫宮と一緒に階下へと向かっていった。
どうやらオークジェネラルは追ってこないようなので、安心して一階へと突っ切っていく。
そして例のスイッチ部屋へと再び戻ってきた俺たちは、もう一度それぞれの階で確認した印を口に出していく。
「一階にはバツ、二階にはマル、三階もマル。四階はバツで、五階もバツだった。そして……」
俺は最後の印を聞くために姫宮を見る。
「六階のあの小部屋には〝マル印〟がありましたぁ!」
「よくやった。つまり数字に置き換えると、スイッチを下ろすのは2、3、6の三つか」
「何だかドキドキしてきました……!」
俺も彼女ほどではないが、こういう謎解きの答え合わせをするのは心臓が高鳴る。
一応用心のために、姫宮にはまた部屋の外で待機してもらい、俺はまず2のスイッチを……下ろした。
「……………何も起きねえな」
罠らしきものが作動した形跡はない。つまりは――正解。
今度は3。……これも何も起きない。
「最後はコイツだな」
6のスイッチの前に立ち、俺は息を呑んでスイッチを下ろす。
直後、ガタンッという音とともに、六つのスイッチが壁の奥へと消えていく。
「お、おお……」
思わず後ずさりをしてしまったが、まだ壁の動きは止まらない。
次いで壁に四角い亀裂が走ると、その部分の壁がバラバラと崩れ落ちていく。
「わっ、わわわぁっ!?」
いつの間にか部屋の中に入ってきていた姫宮が、目を輝かせながら壁の向こうに隠されていた部屋を見つめる。
「隠し部屋発見ですよぉ~!」
「……みてえだな」
綺麗に壁が崩れ落ちたあと、そこから現れたのは六畳ほどの空間。
そして壁の突き当たりには台座があり、その上には念願だった代物が――。
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