第15話 寄生プレイはやはり凄い
時間にして凡そ五時間ほど。
すでに空は夕日色に染まり、涼しげな風が身を叩く時間帯がやってきていた。
俺たちはレベリングを切り上げ、そのまま真っ直ぐ図書館へと帰宅していたのである。
「結構疲れましたね」
「うむ。だがその分、見返りの大きな冒険になったのではないかな」
確かに、俺も高レベルモンスターを狩り続けたこともあって、レベルも上がったし、無事に帰還も叶ったので言うことはない。
「ううむ。しかしまさかたった一日で27レベルまで上がるとは……正直予想外だったな」
先輩の言う通り、当初の目的は20レベル程度まで上がれば良いと踏んでいた。
それくらいあれば、多少トラブルが起きても対処できる程度の実力はあるだろうから。
しかし東京駅構内には想像以上に高レベルのモンスターが棲息していたのだ。
特に試しに確認してみた改札外にある地下の一番街には、40レベルを越すモンスターが何体も存在した。
お蔭で《死眼》で殺しては、一階に戻って休息し、また地下に戻って殺すを繰り返していたので、時間はかかったが、その分対価も大きかったのである。
きっともっと奥にはさらに強いモンスターががいるだろうが、あまり深入りすると、それこそ戻って来られなくなることがあるかもと考慮して、もう良い時間帯ということもあって戻ってきたわけだ。
そして今、それぞれのステータスを出しながら、獲得したポイントの消費手段に頭を悩ましていた。
「先輩、討伐ポイントで食料や武器などを購入しておいてくださいね」
「武器といっても君のように刀を振り回せるほど器用じゃないんだがね……」
あー……確かに。
俺だって最初はカッコ良さから刀を選んだが、振るうのに大分苦労はした。何せ剣道部でも何でもなかったから。
だから完全に我流だが、毎日モンスター相手に振るいながら慣れていったのだ。
しかし先輩の小さな身体じゃ、確かに刀は扱いにくいかもしれない。
「じゃあ……投擲武器とか? クナイとか投げナイフとかありますよ?」
「それこそ技術が必要だと思うんだが……」
「そこはほら、《投擲》のスキルを取るんですよ。そうすれば上達も早くなります」
「あ、なるほどな。武器を扱うためだけにスキルを取るという選択もあるのだな」
スキルには《剣術》もあるのだが、俺は特にこだわっているわけではないので今のままでいいと判断したのだ。
「では《投擲》を取って、討伐ポイントでクナイを何本も買っておこうか」
「クナイは安いですし使い勝手も良いですからね」
接近戦でも使用できるから、扱い用によっては刀よりもタメになるかもしれない。
「何だかこうやってると、先輩と一緒にゲームでもやっている気分になりますよ」
「ははは、違いない。できれば安全なVRMMOだったら良かったのだがね」
しかし現実は甘くなく、外に出れば死ぬ危険のある殺伐とした世界である。
こうして互いに新たなスキルやアイテムなどを獲得したステータスがコレだ。
鈴町 太羽 レベル:50 スキルポイント:8
体力:1950/1950 気力:2480/2480
筋力:168 耐久性:135
特攻:G%?S 特防:216
敏捷:190 運:45
ジョブ:死神(ユニーク)
スキル:死眼(ステージⅡ【死線】・【死界】)・気力自動回復S・鑑定B・状態異常耐性A・気配感知B・アイテムボックス拡張B・鷹の眼B・鑑定妨害B
コアモンスター討伐数:8
討伐ポイント:3800
称号:魔眼持ち・ドラゴンスレイヤー・瞬殺魔・モンスターハンター・ギルド『サーティーン』・ギルドマスター
愛葉こまち レベル:28 スキルポイント:5
体力:610/610 気力:1100/1100
筋力:65 耐久性:63
特攻:66 特防:67
敏捷:65 運:85
ジョブ:錬金術師
スキル:錬金B・投擲B・鑑定B・状態異常耐性B・気力自動回復C・・アイテムボックス拡張B・漂流C
コアモンスター討伐数:0
討伐ポイント:550
称号:探究者・ギルド『サーティーン』・寄生プレイ
俺に限ってはもう中堅プレイヤーみたいなレベルだろう。昔のゲームならラスボスにアタックできる成長ぶりだ。
ちなみに俺は《鷹の眼》をランクアップさせたのと、新しく《鑑定妨害》をゲットした。
この《鑑定妨害》は、文字通り相手からの鑑定を妨害するスキルだ。
俺の能力はあまり他人に知られたくない。だからできれば優先的に上げていきたい。
Sランクを取得すれば、たとえ《鑑定S》でも防げるらしいので是非とも欲しいものだ。
しかしSランクまで上げるには、合計110ポイント必要なので結構な道のりである。
ただ今でも《鑑定A》以上でないと俺のステータスは見ることができないようなので、そこそこ十分かもしれない。
俺に至ってはそんな感じだ。やはり先輩の成長が著しいものがある。
残念なのは、全体的にパラメーターが低いことと、気力は高いのに体力が少ないのは欠点になるだろう。
まあその分はスキルで何とかカバーしていくしかないと思う。それなりの武器を装備することで、十分高レベルモンスターとも戦えるだろうから。
だがここで一言言いたい……。
「何で《漂流》を取るかなぁ……」
「緊急時には役立つと考えてのことだよ」
まあ確かにどう足掻いても倒せない相手が目の前に現れた時には有効かもしれないが……。
もう俺にとっちゃネタスキルにしか思えない。このスキルが活躍しないことを祈ろう。
「けどほぼほぼ俺と同じスキルですね。何? 俺のことどんだけ好きなんすか?」
「んなっ!? ち、ちちち違うぞ! これはあくまで効率重視した結果であって、決して君に懸想しているから同じが良いとかそんな乙女心が爆発したのではなく――」
「あーはいはい。冗談ですから、そんなにムキにならないでくださいよ。分かってますから」
「むぅ…………全然分かってないくせに」
「あん? 何か言いましたか? 不満があるなら聞きますが」
「べ、別にない! そういうところだぞ君のいけないところはっ!」
そんなに今の冗談は笑えなかったのだろうか? 中々にユニークな発想というか、単なるノリとして言っただけなのに。
「今後もギルドとして活動していきます? これなら先輩一人でも、小規模ダンジョンくらいなら攻略できるはずですけど」
「しかし変態『ギフター』相手だと厳しいのではないかな?」
「それは……まあ確かに」
モンスターは基本的に人間ほど知恵が回るというわけではない。だから単純に攻めるだけの存在が多い。
しかし人間相手じゃそうはいかない。何せ哲学者であるパスカルにして『考える葦』と言わしめる存在なのだ。
多少有利でも、ちょっとしたことで戦況を覆されることだってあるだろう。
必ずしも強い奴だけが勝つ世界じゃない。
それはスポーツを見てても分かるはず。やはり考える力こそが、不動の勝機に導くのである。
人間もバカばっかだと助かるが、そうでない連中だっているのだ。
そんな相手だと、今の先輩じゃ正直キツイ。
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