第35話 とまどい

「こんなとこまで来たのか」

 スズの携帯で連絡し、ダイマたちが公園にやってきた。

「困ったことになっちゃった」

 ネオンが、今にも泣き出しそうな顔でユウを見つめる。

 一番ちいさな少女が走り出す。

 ランタンがユウに駆け寄った。力強く指差す。

「場所はここだ。いいな?」

「どういうことだよ」

 わけが分からないユウに、ネオンが説明する。

 ランタンは指令を果たすまで戻れず、居場所がないらしい。

「それで、困ってるのよ」

「指令が果たせないのはぼくのせいじゃなくて、指示したやつのせいだろ」

 ユウの主張はむなしくひびく。

「ちがう。目覚めないからだ」

 ランタンの気持ちは変わらず、押し問答がつづく。

 どうにも主張を変えないので、今晩だけユウの家に泊まることになる。

「早いとこなんとかしてくれ。ネオン」

 寝床ねどこの心配をしている様子のユウ。

 色々と心配なようで、スズもついていくことになった。


「ただいま」

 誰もいないのを知りながら挨拶し、ユウがドアを開く。

 あっという間だった。するりと中に侵入した少女が、いきなりゆかに横たわった。

 どうやら、ランタンはもう寝ようといているようだ。

 慌てた様子で、スズが起こす。

「ベッドがあるから」

「そうか」

 ぐうう。

 少女のお腹が鳴った。

 しかし、ランタンは何も言わない。ユウとスズが顔を見合わせる。

 お腹が空いている様子の少女に、冷蔵庫から残り物が取り出された。

「おいしい」


 少年が皿洗いをしている。

 二人の少女はお風呂だ。ランタンがユウの家から出ないため、スズが家に戻ってパジャマ類を持ってきていた。

 スズが湯船で気まずそうにしていると、ランタンが話しかける。

「夫婦か?」

「ちがう。違うから」

 ひたすらあわてている様子を、ユウが知るよしもない。

 その後、ユウもお風呂と、ついでに風呂掃除。

 スズとランタンは、ユウの母親の布団で一緒に寝ることになった。

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