第30話 迷い

 金髪の少女は、迷っていた。

 指令を受けて近付いたことを、“彼”に知られたくないからだ。

 楽しい日々を過ごせなくなってしまうかもしれない。

 そう思うと、力を使うことができない。

「ダメ。やっぱり、アタシ!」

 ためらう様子のないもう一人の少女。スズを尻目に、ネオンはその場から離れた。

 誰も少女をめることはできない。

「楽しい日々?」

 やはり、君は何も分かっていなかった。だが、いまは、それでいい。

「なんだ。二人きり、じゃなさそうだな」

 ダイマがやってきた。しかし、さっぱり役に立たない。

 力を感じることもできない存在は、力ある者にたやすく踏みつぶされる。

 力があっても同じこと。

 金属を曲げることしかできないスズでは、ランタンに太刀打ちできない。

 まず、近づくことすらできないからだ。

「いや。まず、力がないことを分かってもらわないと」

「目覚めればいいだけ。なんで、簡単なことができない」

 自転車が落ち、道で大きな音を鳴らす。

 ランタンはいらついているようだ。あまり刺激するのはよくない。


 陰から見ていた少女には耐えられなかった。

 かっと目を開く。

 大切なものを、失いたくはない。

「逃げたら、後悔するから!」

 誰に聞かれたわけでもなく、少女が叫んだ。

 一度は離れたネオンが、再びやってきた。ランタンと対峙する。

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