第28話 名前はランタン

 打ち上がっていく花火。

 それを、君は見ていなかった。

 トイレから出てきたところで、どこかで見た姿を瞳にとらえる。

 いつかの夢で見た、フードを被った小柄な人物がいた。

 見物人が大勢いるので、君たちはかなり近づき、駐輪場の前で会話する。

「お前、五七か」

「そう。ご、ななはコードネーム。名前は、ランタン」

「ランタン?」

 夢とは違う。まず、君の第一声から違った。それに、周りもこんなににぎやかではなかったはずだ。

 フードを取り、無垢むくな少女の顔が現れる。

 前髪と違い、後ろは長い。とはいえ、編んでいるので後ろから見ないと分からない。

「目覚めなければ、ここで終わり」

 知っている状況と違うことをいぶかしみつつ、ユウが対峙する。せざるを得ない。

「千年に一人現れるという、強大な特殊能力だろ? そんなのないって」

「伝説を知っているのか。さすが、世界を変えられるだけある」

 年相応のあどけない笑顔を見せるランタン。だが、すぐ真顔になった。

「だから、ないって」


 スズとネオンは、対応を協議していた。

 飲み物を買いに行ったきり、ダイマが戻ってこない。

「ユウの近くに行かないと!」

「よし。行こう!」

 二人よりも強い力を感知したため、迷っている時間はない。

 戻ってきたダイマが一人になっても、仕方ない。世界の命運のほうが重要だった。

 立場の違う二人の少女は、同じように嫌な予感がしていた。

 同時に振り返り、ならんで歩き出す。

 スズとネオンが、ユウのもとへと急ぐ。

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