第23話 共同戦線

「これ以上、話すことはない」

 開かれたドアから、タダシが入っていく。靴を脱いで、君の家の中へ。

「なんなんだよ!」

「いいから、来なさい」

 わけがわからない君は、男ともみ合いになる。

 体格差と体力差は大きく、どうあがいても太刀打たちうちできない。

「ちょっ。いてて」

 手首をつかまれ、君は動きを封じられた。

「伏せて!」

 玄関から、スズが飛んできた。

 文字通もじどおりの意味で。

 見えない力に支えられて、宙に浮いたまませまってくる。

 手にしているのは、バッグの底にある金属の板。海水浴用の着替えを入れているものの一部だ。

「何っ?」

 普通に立っただけでは不可能なはずだった。

 その高さにあるタダシの腕に、スズの手がいともたやすく届く。

 かたいはずの金属の板がビニールひものように曲がり、タダシの腕は拘束された。

 二人の合わせ技で、ユウは守られたのだ。

「どういうことだよ」

「力はこうやって使うの。すごいでしょ」

 ふわりと金髪をかきあげて、ネオンがユウを指差した。

 とうぜんのように、ユウは力を信じていない。手品だと思っている。

「ネオンちゃんの言ってる力って、これか。すげーな。手品より派手だぜ」

 精神を高揚こうようさせるダイマと違い、ユウは普段どおり。

「今日って、手品の発表会だっけ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る