第21話 約束の朝

 ユウの家の隣。

 古城と書かれた家の中。集合住宅なので、当然ながら内装が似ている。

「申し訳ありません」

 スズは、携帯電話ではない装置で通信している。

 かすかに、いつになったら、という言葉が聞こえてきた。

「必ず、目的は果たします」

 通信が終わった。相手に急かされたらしく、スズが唇をかむ。


 約束の朝。君は家にいた。

「一日ぐらい休んでもいいんだぞ」

「何を?」

「食事だよ。別にその辺で買って食うし」

「ダメ。どうせ好きな物しか買わないんだから」

「まあ、そうだよな」

 君は、スズと二人での朝食を終えた。

 いつものように洗い物を手伝う。

「なに?」

 じっと見つめているのがばれたらしい。君は、隠し事が苦手だ。

「なんで彼氏がいないんだ、って思って」

 何か別の話題でごまかそうとしたつもりが、直球な質問をしてしまった。

 しまったと思っても、もう遅い。

 彼女の返答に、あまり時間はかからなかった。

「いるでしょ」

「え?」

「ここに」

「……」

 何も言えなかった。“そんなはずはない”という言葉がのどの奥で押しとどまる。

「冗談よ」

「だよな」

 君は、なぜか汗をかいたようだ。体温が一気に下がるのを感じた。


 くつろいでいると、インターホンが鳴った。

 来客だ。

 スズが止める間もなかった。ダイマがやってきたと思い、玄関の扉を開くユウ。

 そこには、大学生くらいに見える男が立っていた。

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