第20話 始まる夏休み

 ついに始まった夏休み。

 だが、君は特に何をすることもない。

 むせかえるような屋外から逃げるように、冷房の効いた店内へ。

 ユウは食材を買いに来ていた。

「買い物、任せてくれてもいいのに」

「スズ? なに買おうか」

 連絡を取っていないのに、少女はいつのまにか隣にいた。

 いつものことなので、少年は気にしない。

「あっ。ユウだ。偶然ぐうぜんだね」

 ネオンもやってきた。

 やはりいつものことなので、君は動じない。

 むしろ、当たり前のような気さえする。

「よく聞く声がすると思ったら、何やってんだ。って、買い出しか」

 予期せず、ダイマとも出くわした。

「ええっ。マジか。びびっただろ」

 珍しいので、ユウはとてもびっくりしたようだ。


 君はのんびりしたかった。

 しかし、気づけば、四人でテーブルを囲んでいた。

 夕食が始まる。

「どうしてこんなことに」

 自宅に美少女が二人もいるのに、少年は嬉しそうではない。

「割り勘で買ったんだから、文句言うなよな」

「スズって料理うまいんだね」

「よく噛んで食べてね」

 焼きアジのこうばしい匂いが食欲をそそる。

「そうだ。海に行こうぜ」

 ダイマが提案した。

「唐突だな」

「魚から着想を得た、と言ってくれ」

 どこにいても結局同じなら、それもいいかもしれない。

 と考え、君は同意する。

「行くか。暑いだけな気がするけど」

「私もいいよね?」

「もちろん、アタシも行く!」

 スズとネオンも、当然のように同行することになった。

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