第18話 交通安全教室

 交通安全教室こうつうあんぜんきょうしつ

 それは、自転車は車の一種だと認識し、安全に気を配る場所。

 勢いよく走る鉄のかたまりに、おなじく金属製のフレームがぶつかる。

 けたたましい音がひびき、棒状のフレームはぐにゃりと曲がってしまった。

 自動車じどうしゃと自転車の衝突実験だ。

 ユウが二輪車に乗ることはないものの、衝撃の強さを肌で感じた。

「あのくらいの力、ユウならあるのに」

「ない、ない」

 隣から聞こえるささやきを、君はあっさりと否定する。

 やはり、ユウは力を信じていない。

 そのことはネオンにノイズを走らせ、焦りを生んでいるようだ。


 自宅で着替えた君は、すぐに家を飛び出す。

 いつもより授業が早く終わったため、時間が腐るほどあるためだ。

「腐るほどってなんだよ」

 街の登り坂。五尺公園の手前で、長身の男と目が合った。

 全く知らない人だ。

 そして、その男に声をかけられた。大学生のように見える。

「駅がどこにあるか、教えてもらえないかな?」

「近いですよ。五尺坂を下りればすぐです」

 去ろうとするユウに、相手から思いがけない言葉が投げかけられる。

「すごいオーラが見えるけど、芸能人かい?」

「違います」

 とてつもない威圧感いあつかんを感じた相手の気持ちなど、君に分かるはずもない。

 これは、関わり合いにならないほうがよさそうだ。

 そう思い、君はそそくさと立ち去る。

 ユウより年上の男は、握手を求めた手を引っ込め、少年のうしろ姿を見続けていた。

 彼の名はタダシ。

「さすがだな。能力を察知したか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る