第17話 夏服

 衣替ころもがえの季節が来た。

 皆いっせいに夏服になる。

 教室の中が、黒から白へと塗り替えられたかのようだ。

「おはようっ」

 君の右隣へやってきた少女も、とうぜん夏服だ。魅惑的な姿態を白が包み込み、それを金髪が彩っている。

「おはよう」

 スタイルの良いネオンは、クラスで注目の的。

 しかし、スズも負けてはいない。左隣で、長い髪がさらさらと動いた。

「もうすぐ授業だから、静かにね」

 二人にはさまれている君は、多くの男子からうらやましがられている。

 それを『声』によって知った。

「なるほど。そんな気はしてた」

「じゃ、おれ席に戻るわ」

 会話をしたと思い込んでいるダイマが、自分の席へと移動していく。

「分からないところがあったら、いつでもアタシに聞いて」

「そんなの、私がいるから必要ないから」

 そうこうしている間に、授業の開始を知らせる音がひびきわたった。


 静かな授業を経て、休み時間になる。

 もちろん、君の周りはにぎわい続けることが約束されていた。

「放課後、どうしよっか」

「どうもしないでくれると有難ありがたいんだけどね」

「スズには言ってないでしょ」

「ユウが困ってる、って言ってるの」

 仲のいい二人の会話を、君はただ黙って聞いていた。

 ついうっかり口が開かれる。

「たまに『声』間違ってないか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る