第16話 力に怯える者たち

「やはり、覚醒してはいないようだ」

「と言っても、このまま放置するわけには」

 力を目覚めさせずに味方に引き入れることは容易よういではない。

 政府としては、事を荒立てたくない。

 多くの者は、強大な力を管理するのは難しいと考えていた。

 すみずみまで掃除の行き届いた会議室が、一瞬の静寂につつまれる。

「俺に任せてくれれば、部下に処理させるんだが、な」

「どういう意味かな」

「言葉の通りだ。捕らえてしまえば、後はどうとでもなるだろう」

「いかん。リスクが高すぎる」

 年配の男性が、つよい口調で断言した。

「世界を変えられる力があると、本気でお思いですか?」

 生真面目きまじめそうな男が口元をゆるめる。信じる者とそうでない者のあいだには、大きな溝があるようだ。

「変革の周期が千年ごと。その中心には人がいる。これが全てだ」

「周期が長すぎてデータが乏しい点を除けば、ですね」

「今は信じなくても構わん。だが、命令には従ってもらうぞ」


 過激派の拉致まがいの提案は却下された。

 ユウの知らないところで、少しずつ事態は動き始めている。


「間違いなく筋肉痛だな」

「のんびりしようぜー」

「できればいいけど」

 君は、なんとか強歩大会でゴールにたどり着けた。

 これから巻き起こるうねりを感じることも、今はまだなく。

「うねりって何だよ」

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