第15話 強歩大会

 本日の移動距離は、約20キロメートル。

 もちろん、歩きだ。

 君は歩いてもいいし、歩かなくてもよかった。

 校庭に、体操服姿の生徒が集結している。ここは如月学園きさらぎがくえん

強歩大会きょうほたいかいって何なんだよ」

「学校行事だろ」

 つい『声』に聞いてみたものの、説明はない。

 運動不足が指摘される君は、親友と一緒に参加することになった。

 やはり、いつもの二人も。

「自分のペースでね」

「一緒に行こっ」


 船渡市から出ることはなく、決まったコースを進む。

 五尺丘や敷川周辺を歩くことになる。市街地は通らず、とうぜん、海にも行かない。

「坂道は簡便かんべん

 君は歩く。ただひらすら。この速度だと、終了は4時間以上あとになる。

「のんびり行こうぜ」

 ダイマもそばにいた。

 運動できるはずのスズも、ゆっくり歩いていた。髪はあまり乱れていない。

「ちゃんと運動しないとダメだからね」

「そういう行事みたい」

 ネオンも、ユウの近くを歩く。くせのある髪がぴょんぴょんと跳ねていた。

「先に、行ってもいいぞ」

 などと言いながら、君は四人で歩き続ける。

 誰かを払いのける力はない。


 途中で飲食は可だ。

 いつもの食堂でもないのに、やはり四人での昼食になった。

「もう少しだから」

「そうだな」

「元気出していこう」

「うん」

「休ませてやれよ」

 ユウはへばっている。

 あちこちから誰かに見られていることも、気づけない。

 いつもとは違い『声』に反応できないほどだ。

 運動は日々の積み重ねが重要だと、君は知ることになった。

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