第9話 四人の時間

 休日の昼下がり。

 ダイマの携帯電話から着信音が鳴った。

 相手はスズ。不思議そうな顔で髪がかきあげられ、通話が始まる。

「まずいことでも起きたか?」

『いいから、すぐ来てくれ!』

 機械を通して変わっているものの、それはユウの声だった。

 気をつかって二人きりにしたはずなのに、いったい何が?

 という表情のまま道を行く、少年。丘の上の公園を目指した。

 

 街を見下ろす公園には、葉桜はざくらが目立つ。

「うわっ」

 思わず声に出したダイマ。視線の先には、黄色。三人目としてネオンがいた。

「おーい!」

 君は、おおげさに手を振る。災害現場に取り残されたかのように。

 ゆっくりとやってきた親友に、早口で用件が伝えられる。

「遊ぶ約束あったろ。早く行こうぜ。早く」

 もちろん、嘘だ。

 そんなものがあるなら、人の電話を借りてまで連絡を取る必要はない。

「嘘ね」

「ウソじゃん」

 やはり、あっさりと偽りは見破られてしまった。

「聞こえてるのか?」

「何がだ?」

「いや。なんでもない」

 ユウは苦笑いするばかり。振り返り、スズの目配せに気づいたからだ。

 二人の秘密として、自分だけに聞こえる謎の『声』のことを話すわけにはいかない。

 大きな川を見下ろしながら、君は息を吐き出した。

 ぐうぜん出会ったと言い張るネオンも含めて、四人で過ごすことになる。

 誰かと二人きりになろうという動きはなかった。

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