第7話 転校生ネオン

「今日は、みんなに転校生を紹介します」

 先生の言葉のあとに、その人物はやってきた。くせのあるショートヘアの女子。

 同じクラスのミツルがときめいたことを、君は知るよしもない。

「いや、知っちゃったよ」

 つぶやきは、ざわめきにかき消された。

 教室でひときわ目立つ黄色い花のように、かわいらしい雰囲気を放っている転校生。

「ジェファーズ音穏ねおん。気軽にネオンって呼んでね」

「穏やかさとは対極っぽいけどな」

 誰かの小声は、やはり誰にも届かない。

「では、ネオンさんの席は――」

 先生の言葉を待たず、少女はすたすたと歩いていく。まるで決まっていたかのように。

 ハーフらしい端正な顔立ちのネオンが、一番後ろまで行って立ち止まった。強引に君の右隣の席へと座る。

「よろしく。ユウ」

「って言っても、隣は、今日休みのノリエの席なんだけど」

「なら、これでいいでしょ」

 立ち上がったネオンは、空いている机と軽々と入れ替え、にこやかに座った。

 ユウの左隣に座るスズは、ムッとしている。もちろん、その様子を知ることはできない。

 鉄製の定規を曲げてしまい、あわてて元に戻すスズ。誰も見ていなかったようだ。

「マジかよ」


 昼休憩。君は、教室から抜け出した。

 白を基調とした食堂に着いたところで、そでを引っ張られる。

「来ちゃった」

 スズと一緒に席へ着こうとすると、さらに新たな人物がやってくる。

「一緒に食べようよ」

 ネオンもやってきて、二人のあいだで火花が散った。

「なら、あとは二人で仲良く」

「それじゃ」

「意味ないよ」

 スズの言葉をネオンが補完した。どうやら、二人は仲がいいらしい。

「なんだ。仲良しか」

 怒涛どとうのような人が増えて、ユウはさらに疲れた。授業が終わるやいなや、そそくさと家に帰る。

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