第5話 穏やかな部屋

 玄関から呼び鈴が鳴らされた。

 けだるい表情を隠すことなく、君は自室から出ていく。

「その表現は何なんだ」

 のぞき穴で確認し、ドアが開かれる。

「よっ。どうせ暇だろ?」

「否定できないな」

 親友の言葉に悪意はない。ユウは、それをちゃんと理解している。

 にやけ顔に、同じような表情で言葉が返された。


 音楽を聴き終わり、動かされる椅子。

 ダイマがビデオゲームを始めた。

 激しい動きをしないので、男にしてはすこし長めの髪は乱れない。

 ユウは、それをぼんやりと眺めていた。自分でプレイする気はないらしく、ベッドに座って気を緩めている。

「家が一番落ち着く」

「そんなこと言って。本当は?」

 茶化されている。気づいていながら、君は返事をしない。

 あえて、まったく別の情報を返す。

「どこからともなくぎつけてくるから、最初から部屋にいるという結論に至った」

「運動したほうがいいぞ」

「お前が言うな」

 笑い声の合唱が起こる。

 少年の眉が八の字になったことを、もう一人の少年が見ることはなかった。

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