第4話 騒がしさ

 うららかな日和ひより。多くの生徒たちが学校へ向かっている。

 君も、如月学園きさらぎがくえんへと歩みを進める。制服姿で荷物を持ち、二人で。

 うしろから誰かが声をかける。

「まーた仲良くなったじゃないか」

「今日はたまたまだからな。勘違いするな」

 辛辣しんらつながら、悪意はない。茶髪の少年も、意図は理解しているらしい。

 気をきかせて走り出した親友を放置して、ユウは空を見上げた。

「まだ聞こえる?」

「やっぱり、スズの仕業なわけないし、ダイマでもないか」

「内緒、だからね」

 少女の顔が近づき、少年はたじろいだ。

 もちろん、それ以上の行動はない。


 君は、いたって普通に授業を受けた。

「次は何だっけかな」

「国語」

 透きとおるような声が、左隣から聞こえた。長い髪が揺れている。

「スズに聞いたんじゃなくて、ひとりごと」

「いいでしょ。答えても」

「休み時間は休もうぜ」

 いつものことだ。成績優秀で容姿端麗ようしたんれいな彼女は、毎度ちょっかいを出してくる。

 ユウは、ろくに休憩できない日々を過ごしていた。

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