第2話 監視の目

 普通の部屋に明かりはともらない。

 君は靴下をはいた。いたってシンプルな床で、スリッパが音を立てる。

「いつまで続くんだ?」

 ぼやいたところで何も変わりはしない。携帯電話はないので、暇をつぶす手段がとぼしい。

 ユウは、やたらリアルな夢だと思っているようだ。そのためかパジャマを着替えない。

「はっきりしたりしなかったり、この『声』の基準は何だよ」

 喋りつづける『声』にツッコミを入れても、やはり止むことはない。


 集合住宅の一室を気にする者がいる。

 近くでも、遠くでも。

 当然ながら、普通の少年には知るよしもない出来事。

 やたらときれいな会議室に、明かりがともる。スーツ姿の数名が席についた。

 だらしない身なりの男が口を開く。

「力のある者は、遠くから居場所を察知できるほど強大なようです」

「それで、目覚めてはいないのだな?」

「はい。おそらく」

「歯切れが悪いじゃないか」

 年配の男性が体勢を変えた。動きに気品を感じさせる。

「狩猟対象であった大型の動物が絶滅し、食生活が変化、といった大規模な事象は確認できません」

「禍々しい力を持つがゆえに孤独だった男、か」

 そこでは、一般人には無縁な何かが話されていた。

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