第56話 不完全なあなたの作品が好き
先日、某文豪ゲームをやっていた時、ある台詞に感銘を受けました。
「“世の中のためにならない、不完全な”作品が好きだったんだろ」
それは自分の作品が世のためにならない、駄目な作品だから、この世界から消してしまいたいとする文豪への言葉でした。
作家にとっては不完全な作品でも、読者は彼の、その不完全で世の中のためにならない作品を愛したのだろうと。
似たような話が二葉亭四迷にもあります。
二葉亭は若い頃に書いた翻訳本を恥じており、きちんとしたものにしたいと考えていました。
そのため、数年後に、本に収録する際には、全面的に改訳し、しっかりと正確な文章にしました。
ところが、これが良かったかというとそうではありませんでした。
読者は若い二葉亭が書いた、未熟でぎこちない、でもだからこそ恋愛ものに詩情を感じさせる文章を愛していたのです。
小説でもエッセイでも何かを書いていると、きちんとしなきゃと思う時があるかもしれません。
また、時々、「こんなものを書いてないで、もっと世に認められるものを」と考える作者さんもいらっしゃると聞きます。
でも、それを考えているのは作者だけで、読んでいる方は「“世の中のためにならない、不完全な”作品」が好きなのかもしれません。
完全じゃないとダメだとか、世の中の役に立つ作品ではないとダメだとか思った時には、この台詞を思い出そうと考え、ここに書き留めておきました。
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