第100話 位階
「ふい」
今日は雨が降っていないので、露天風呂を使用していた。温泉に浸かれるのは最高だ。
「血百合会についてはアレで良かったのか?」
俺はビキニの姫子に問うた。バインボインだ。アリスもだが。
「……………………」
そして綾花がコンプレックスに陥っている。
閑話休題。
「相手が何某を期待しているか知りませんが……あまり信じる気にもなれませんね」
「利用されるだけか?」
「最悪その可能性もあります」
血百合会。吸血鬼の互助組織な。
「こっちとしても別に人間社会に貢献する気もありませんので」
「高位のヴァンパイアって言われてたよな?」
「相対的には……とは申したでしょう?」
「吸血鬼にランクがあるのか?」
「ええ。まあ。それなりに」
「興味深いな」
率直に俺は言った。アリスも期待の目で姫子を見ていた。綾花はあまり興味なさげ……と言うより知っているのだろう。
「わたくしはサードヴァンパイアですので」
「サード……」
「まず吸血鬼……ヴァンパイアには最初の一人がいます。コレは宜しいですか?」
「まぁ発端がなければ繁殖もないよな」
「ええ。この発端のヴァンパイアを始祖……グランドヴァンパイアと呼称します」
「グランドヴァンパイアですか?」
アリスが首を傾げる。
「始祖。始まりの吸血鬼。あらゆる意味で究極の個体ですね」
「強いのか?」
「人外の意味ではアリスお姉様や綾花に順ずるかと」
そりゃ確かに化け物だ。
「そのグランドヴァンパイアが血を吸って繁殖したヴァンパイアを……セカンドヴァンパイアと呼称します」
「セカンド……」
「後は順繰りですね。サードヴァンパイア。フォースヴァンパイア。フィフスヴァンパイア。シックスヴァンパイア。要するに繁殖したヴァンパイアは親より一位階下がったヴァンパイアとして定義されます」
「じゃあお前は」
「セカンドヴァンパイアによって繁殖された、サードヴァンパイアになりますね。グランドとセカンドは希少なので、サードヴァンパイア以降が世間に氾濫していまして、その意味でサードヴァンパイアは目にする吸血鬼の中では高位に位置するんです」
「それで血百合会はお前をスカウトしに来たのか?」
「そう相成ります」
頷く姫子に合わせてボインと胸が揺れた。その爆乳はどうにかならんか?
「もっとも肉体を捧げるお姉様がいらっしゃいますのでわたくしには意味がありませんけれど……っ」
「だから胸を揉まないでください」
「無理です!」
「感嘆符を付けるほどですか?」
「お姉様の肢体は触っていて飽きませんので」
バインボインだし、肌もきめ細やかだからな。たしかにスベスベの肌は触る人間を朗らかにする。…………朗らかか?
ともあれ概要は分かった。
「じゃあお前も繁殖されたヴァンパイアなんだよな?」
「そう相成りますね」
「親元を離れて良いのか?」
「独立はしていますよ。親の庇護は受けられますけど、一応こっちに事情はありまして」
事情……な。
「血百合会は……そんなヴァンパイアを望んでいるわけだ」
「多分ですけどね」
「国家レベルの話か?」
「仮にそうなら死袴の家を敵に回しはしないでしょう」
「え……拙で……ありますか……?」
「まぁそうなるよな」
俺は頷いた。姫子はアリスの胸を揉み揉み。ちょっと羨ましい。
「たしかに……死袴のやり口に……国家は口出ししませんけど……」
「つまり民間レベルの話か?」
「行政民営化?」
「えと……どうでしょう……?」
困惑の綾花。たしかに聞いても詮方無しか。実際に場合や事情はどう在れ、綾花は神鳴市に湧いた鬼を退治するだけだ。それ以上のモノではない。
じゃあ姫子はどうなるか……と議論されれば、理性と知性に期待せよと言った辺り。
「とりあえず……血百合会には……適合しないで……?」
「構いませんよ」
姫子はコックリ頷いた。
「あの……いつまで胸を揉むつもりで?」
「一生」
重い。重いぞ。
「さてそうなると……」
「威力使徒ですね」
「そうなるか」
アリス。姫子。俺の順だ。
「単体で制しうるか?」
「不可能です。ルーンバレットへの防御能力を持ちません故」
アポクリファか。たしかに吸血鬼退治は中世から続く魔女狩りだよな。
「お姉様が一緒なら問題ないわけですけど」
「学校がありますので」
そこは譲れないらしい。ま、分かってはいても。まず以て高位のヴァンパイアを相手どって戦慄能わしめる存在だ。
普通にヴァンパイアハンターの極致なのだろう。
それは姫子の戦慄からも伝わってくる。ぶっちゃけた話、「どうしろと?」が結論もなり得るだろう。それほど協会の使徒はタチが悪い。
「で、お兄様はどう為されるので?」
「誠意ある説得」
「威力使徒相手にですか?」
「他に居ないだろ」
「スズメバチに襲うのを止めろと言っているような物ですよ?」
「アナフィラキシーショックな」
言い得て妙だ。アレルギーって奴は、それほど業の深い。そうでなくとも生き難い世の中だ。全知全能の絶対神がいるのなら、文句を付けたい不幸は山ほど在る。
「お兄様は信奉しているので?」
「八百万の神はな」
「しんとー」
「です」
祈りと感謝の気持ちを込めるに、これ以上も無いだろう。とはいえ別段他の宗教を貶める気も毛頭無いが。異教廃絶は人間の最も唾棄すべき知性だ。
「お兄様は懐が深くいらっしゃいますのね」
「単にものぐさなだけだ」
いや本当に。別段宗教戦争を起こす気も無いしな。
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