第75話また大きくなったな
「また大きくなったな」
放課後は保健室。養護教諭に場を借りて、俺はアリスと一緒にベッドを借りた。カーテンで間切りをして一種の結界を創る。姫子も事情は知っているので、今は養護教諭と共にコーヒーを飲んでいた。
「兄さん……」
プチプチとボタンを外して、アリスは胸元を露出する。その乳房の大きさを過去と比較しての俺の言葉が先述だ。また大きくなっていた。成長の様子著しく、豊かに実った肌色の果実は、男にとっては脅威なり得る。あるいは凶器か。俺じゃなかったら普通に襲われているだろう。いや、俺ですらゲッシュに縛られているだけで、因果が無ければ危ないレベルだ。
「とりあえず始めるぞ」
「お願いします……」
俺はアリスの双子山の谷に手を差し挟む。心臓に近い位置取りで、治癒を発動。心に溜まったアリスの呪詛を間接的に取り除く。
「んぁ……はぁ……っ!」
色っぽい声も今更だ。どうにも俺の治癒はアリスの情欲を呼ぶらしい。別段気にする必要は無いはずだが、ことアリスの嬌声は、俺ですら兵器に映る。呪詛がこちらに流れ込む。ヘドロのような精神汚染が俺を襲った。何時ものことだ。別段何ほどでも無い。治癒の魔法は、その全てを無に還す。一応一片残さず呪詛を取り除く。その根幹が何なのかは、俺では悟り得ぬ事だが、零から一を生むのが魔法だ。であれば此処で呪詛を零にしても、また一が生まれ得るだろう。その点だけが俺の斟酌。
「終わったぞ」
「兄さん!」
クチュと唾液が跳ねた。上半身を飛び跳ねさせたアリスが、俺の唇を唇で奪った。フレンチなキス。唾液が混じり合い、淫靡な音が支配する。クチャクチャ。俺の口内を、アリスの舌が凌辱する。こちらの舌は絡まるように撫でられた。俺の手を取って、アリスは自分の胸に持っていく。先にも感じた……まだまだ限界を見せない大きさの乳房に俺の手が押し込まれる。ズブリと底無し沼のように柔らかいパイオツが俺の手を包み込んだ。
「…………っ!」
さすがに付き合ってられん。アリスの額に手を当てて、俺はグイと距離をとる。
「あん。兄さん」
「発情したなら自分で処理しろ」
俺はカーテン越しに、保健室の扉を指し示す。
「兄さんではいけないんですか?」
「法律上な」
ディープキス程度なら許しもするが、性行為は生命への冒涜だ。
「別に公にしなければ良いだけでは?」
「ソレで済むなら世界はもうちょっと生き易い」
「兄さんはヘタレです」
「今更確認事項以上の意味もないだろ。俺が一度でもお前の誘惑に応えたことがあったか?」
「無いですけど。でも諦めませんよ?」
「姫子の気持ちもそんな感じらしいな」
「非生産的です」
「お前が言うか」
散々避妊を説いておいて。いやたしかに子孫さえ残さなければ、遺伝子障害も起こりえないし、自慰行為の延長線上で済むのも確かな事実ではあれど。
「ま、おっぱいを揉む程度で我慢するさ」
「私の処女は兄さんに捧げたいのです」
「純情なのか不純なのか……よくわからない言葉だな。いや言いたいことは……かろうじて理解できないでもないが」
「兄さんは望んでいませんか?」
「アリスより可愛い女子を俺は知らんよ」
「でしたら……っ!」
「愛妹としては愛でる」
アリスは恨みがましい目を向けた。言いたいことを十全に受け取って、それでも俺は知らないフリをする。とりあえず状況は終わったのだ。後は個々人の問題だろう。
「むぅ。兄さんはおっぱいでも釣れませんか……」
案外そうでも無いけどな。アリスの爆乳は普通に理想的だし、揉んで至福も感じる。ソレを言ってしまえばアリスのタガが外れるので黙秘しているが、俺だって男子だ。女性の乳房に興味を持つお年頃。
「状況は終わりました?」
ヒョイッと姫子がカーテン越しの声を掛けてくる。
「呪詛に関してはな」
俺は手に残っている愛妹の柔らかさを思い出して手をにぎにぎしながら、カーテンを広げる。
「毎度どうも」
「なにやらエッチなことをしているみたいだけど、大丈夫なの? 倫理的に」
「一線は越えておりませんのでお気遣い無く。コーヒーでも貰えれば拍手喝采」
「いいけどさ」
インスタントのコーヒーを、俺は受け取った。学内で呪詛を除去する場合、保健室を利用させて貰っている。おかげで養護教諭とは顔馴染みになり、コーヒーを振る舞って貰っていた。学校の予算に組み込まれているらしいが、知ったこっちゃござんせん。
「お姉様は大丈夫なので?」
「肉体面ではな。精神的には支えに為ってやってくれ」
「お兄様の代わりが務まるでしょうか?」
「そこは理解してるのな」
「ええ。お姉様のお兄様への愛情は十全に理解するところです」
「辛くはないか?」
「何故です?」
姫子はキョトンとしていた。まるで「分からない」と言っているような。いや、その疑問系こそ分かっていない証拠だろう。言外の意見だ。
「お姉様の恋敵だろう?」
「そうですね。消え失せて貰った方が都合は良いのですけど」
「殺るか?」
「止めておきましょう。お姉様に殺されたくはありませんし」
「ご明察」
「けれどサレンダーにはもう少し刻が要りましょうぞ」
それも事実だな。何か。アリスは綺麗な奴に惚れられたな。有栖川姫子……か。純情の意味で……確かに高レベルだ。アリスを想い、けれども力を持ちながらヤンデレには奔らず。あらゆる意味で想い人を尊重する。普通に出来うる人間がどれだけ居るか。いや姫子は人間じゃ無いが。コーヒーを飲む。
「結局お前もアリスに惹かれたクチか」
「最初からそう申し上げております」
「だったな」
今更か。たしかに内のアリスは可愛すぎる。金髪もそうだし、エメラルドの瞳もそう。なにか乙女の模範が形而下になったかのような錯覚すらし得る。あらゆる意味で破滅的で、その業故に、十把一絡げをそのまま見下す。例外は俺だけ。何が正しいのか。何が間違っていたのか。それすらも超越し、踏みにじってしまう完成形だ。祖母マリアも厄介な者を創った。俺は普通に黒髪黒眼なのにな。溜め息。
「てなわけだがアリスはどうなんだ?」
「謹んでごめんなさいとしか」
「いいですよ? お姉様を諦めるにはまだ早いですし」
慌てる時間じゃ無いか。言ってしまえば無制限に時間はあるわけで
「アリスを吸血鬼化は出来るか?」
「可不可を問うなら可ですけど……」
「え? 血を吸っても吸血鬼化しませんよね?」
キョトンとアリス。ま、実際そうだしな。
「一つ条件がありまして。それを達成していないんですよ」
条件……ね。分からないことだらけだが、ここで詰問する意味も無い。ソレで答えてくれるんなら、最初から明かしているだろう。その程度は、人の機微に敏感なアリスが一番よく知っている。
「姫子は呪詛を持たないのですか?」
「鬼ですから持ちますよ。もっとも在る意味で自己完結型なのでお姉様のような脅威はありませなんでも」
「いや、ていうか養護教諭に」
あまりにスレスレの言葉だ。魔法検閲官仮説は……と思ったら、養護教諭は虚ろな瞳でキーボードをブラインドタッチをしていた。
「おい?」
「ちょっと魔眼で暗示を掛けただけですよ。健康に支障はありません」
そういう問題だろうか。
「ここでならお兄様にボインを揉んで貰っても支障はありませんが?」
「兄さんを寝取るつもりですか?」
「落ち着け。呪詛が精神を殺るぞ」
アリスの金色の頭をクシャクシャと撫でる。
「にゃふぅ」
「とりあえず俺らの矢印関係は分かった。穏便に行くぞ」
「兄さんは私を望まないのですか?」
「それはお前が姫子をどう思っているかにも繋がるな」
「むぅ」
唸るアリス。しかしどうにも因果の糸に絡まっているような錯覚は拭えない。どこでセレクトキーを押したっけか? そうでなくともアリスも姫子もセックスシンボル有り得ざるの領域なんだが。うーん。無明。
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