第73話ところで何時まで
「奇門遁甲ですか」
姫子は変な風に感心していた。奇門遁甲。要するに対象者の土地勘を狂わせる魔術だ。姫子には効かないらしく、普通に魔術研究会の部室に辿り着いていた。今は茶を飲んでいるところ。玉露だ。
「変なところで拘るんですね」
「えと……その……面倒事は……嫌なので……」
綾花らしい答えだ。人と積極的に関わるのを避ける。魔術師ならではの感想だ。
「ソレで……要件でも……?」
「わたくしも入部したいのですけど」
「構いませんが……大丈夫なんですか……?」
綾花が何を懸念しているのか。ソレが俺には分からない。
「構いませんよ。どちらにせよ問題は起ります故」
「それは……そうですね……」
何を納得した? 今……。
「問題が起るんですか?」
アリスが首を傾げた。俺も率直に同意見。別段問題が起るのは良いんだけども、こっちに火の粉が移らないとも限らない。アリスも自動防御を手に入れてはいるも、やはり安全第一は建設業の業だ。建設業ではないも。
「ふぅむ」
姫子はアリスをジロジロと見た。特にボイン。フニャッと揉む。
「何をしているので?」
「お姉様のボインを揉んでいます!」
「いや。ソレは分かりますけど」
「とてもきめ細かい肌と、押し返す弾力。素晴らしいと思えます」
「恐縮です」
こっちには目に毒なんだが。普通に乙女が乙女のパイオツを揉んでいれば男子には強烈な映像だ。
「兄さんも揉まれますか?」
「止めておこう」
理性的に俺は反論した。衝動すらも押し殺して。
「兄さんは私の嫁ですから幾らでも追い込んで良いんですよ?」
「その気になったらそうさせて貰う」
「お兄様は謙虚に過ぎます。お姉様の乳房はこんなに揉み心地が良いのに」
「ソレを普通に言えるお前が凄いがな」
百合ってレベルじゃねーぞ。フニフニと揉まれるアリスの胸。
「当然……相手側も……動いてますよね……?」
「そう相成りますね~」
何が? そこが聞けない俺だ。何かしらがあるのは分かったが。
「で、死袴を頼ったと?」
「いえ、そっちは偶然です。お姉様と一緒に居たいだけですので」
「第二真祖の血族ですか」
「ええ。百合百合です」
緑茶をコクリ。
「結局姫子はガールズラブで良いのか?」
「アリスお姉様こそ至高」
そこに躊躇や思案は無かった。愛情一直線は……それはそれで賛美に値するも、「それもどうよ?」程度は思うわけで。
「お兄様はちょっと倫理に縛られすぎです」
「倫理外の生物から忠告されるとは」
「吸血鬼だって生きてるんですよ?」
「ミミズだってオケラだってな」
そこはまぁ理性に期待するしか無かろうけども。とはいえ吸血鬼か。たしかにガールズラブが専門ならアリスに目をやるのも頷ける。「乙女の究極系だしな」……は兄目線だろうか? 実際にアリスの愛らしさは天井知らずではあるし、姫子が惚れても不思議はない。希に女子生徒でもアリスに憧れを抱く生徒はいる理屈だ。そこに簡潔の対処法があるなら良いんだが、そうでもないのでコッチが苦労する羽目にもなる。いや、アリスが愛らしいのは先述の如く事実ではあるも。
「で、結局こっちは霊地なんですよね?」
「ええ……」
「ではわたくしも誘われて」
「かも……しれませんね……」
綾花と姫子はそんな会話。霊地に引かれてやって来たか。そこをどう解釈するかは、たしかに思想としても興味深い。吸血鬼……か。アリスも血をやっているけど、貧血にはならないらしい。その点は俺も心配していなかった。
「それにしても吸血鬼も食事は取るんですね」
アリスがホケッと述べた。
「別段人体構造は変わりませんから。美味しい物は美味しいですし、血を吸うのとは別に娯楽の一種では有りますよ」
胃も腸も肝臓もあるらしい。なら確かに消化器官は働くだろう。
「魔術は……扱えて……?」
「基本的には」
コックリ頷く姫子。たしかに長寿ならその程度はやってのけるだろうが。
「アリスお姉様も魔術を使えるんですよね? やはり死袴の?」
「いえ、理論はともあれ実施は自分で」
「魔術を? 本当に?」
「何かマズいのですか?」
「脳をぶっ壊す必要性がありますよ?」
「元々壊れているようなモノですし」
そこは
「お姉様は流石ですね」
「兄さんあればこそです」
「お兄様が……」
「ま、化け物呼ばわりは散々受けてるしな」
「兄さんは化け物ではありません! 私に優しいじゃないですか!」
「それはまぁアリスだし」
「でしたら愛があります。人の想念の究極です。兄さんは立派に人間です」
「そりゃどうも」
確かに卑下してもアリスを追い詰めるだけか。それなら楽観論も悪くはない。あくまでアリスを……愛妹を悲しませないためならば。実際にワンセルリザレクションは怪物の域にはあると思うが、アリスにとって治癒の聖術は自分を肯定する唯一のモノなのだろう。そこにどんな意図が有るかは……まぁアリス次第としても、俺が汚して良い領域を一歩超えていることは確かでも有る。
「アリスは本当に俺が好きな」
「兄さんは私の嫁ですから」
「そう言えばそうだった」
「忘れていたのですか?」
「いや、忘れようとしていた」
其処にどれだけの差異が在るかは知らずとも。
「兄さんより魅力的な人間はいませんよ?」
「吸血鬼は?」
「その……まぁ確かに悪い気はしませんけど……でも私にとっての想い人は兄さんで……だから兄さんが私の全てと申しますか。別に吸血鬼を迫害するつもりもありませんけど」
「本当ですかっ? お姉様!」
「ところで何時まで貴方は私のおっぱいを揉み続けるので?」
実際にさっきから姫子はアリスのパイオツは間断なく揉み続けていた。南無三宝。
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