第38話呪詛の吹き溜まり


「結局こうなるわけだ」


 短パン姿の俺。ビキニ姿のアリス。今は風呂に入っていた。


「ん……あぅ……はん……!」


 俺は愛妹の豊かな胸元に手を突っ込んでいた。さすがにここまで育てられると、普通に手を圧迫する。乳圧……というアレだろう。しかもグイグイと押し付けるモノだから、俺の理性も半端ない。誰か褒めて!


「ぅぅ……ぅぁ……んぁ……」


 嬌声を上げるアリス。湯船に浸かってはいても、俺の治癒の快感は別種の呪いだろう。呪詛持ちの因果かもしれない。だからって止める気は毛頭無いが。呪詛を移して浄化する。それだけのことが途方も無い。アリスの呪詛はそれだけで人間を呪いに落とす。


「厄介だな」

「理屈は未だ分かりませんけどね」


 それも確かだ。単純に生き返るだけなら余分な後遺症だろう。そうでない理由を探すには、ピースが欠けている。いやヒントは幾つかあるものの。


「兄さんは鬼退治に向かうので?」

「そんな趣味はないな」


 綾花に任せれば十分だろう。むしろ他に何が要る? フィーバーフィールドなんていう絶対防御を持っているのだ。鬼と相対しても不覚はとらないはず。多分……。


「気になるんですね?」

「友人を思う程度にはな」

「兄さんは私のことだけ心配していればいいんです」

「それはまぁ」


 そうだな。この際は否定も無意味だろう。実際に俺の治癒はアリスを助けるためのモノだ。他に使い途はあっても、まず真っ先に候補が挙がるのはアリスのフォロー。他の案件は別問題とも言える。


「ですから」


 アリスは俺を抱きしめた。胸板にボインバインが押し付けられる。俺じゃなかったら理性振り切ってたろうな。


「兄さんは私の味方であれば良いんですよ」

「それは理解しているつもりだ」

「本当ですか?」

「嘘でもいいんだが……まぁ本当だな」

「えい」


 アリスがさらに乳圧を掛ける。おっぱいが押し付けられて、俺が幸せ。


「私のおっぱいで興奮なさってください」

「十二分だ」


 形而上でも形而下でも。


「じゃあ抱いても」

「他の奴に言え」

「無理な事を仰らないでください」


 ま、そうなるよな。


「呪詛を取り除いたんだからマトモな思考は出来るだろ?」

「兄さんが大好きは魂に根ざした問題ですから」

「魂ね」

「私も嫌いな言葉ですけど。詩的に語る分には魅惑的な単語です」


 ソレも然り。


「で、おっぱいを揉めば良いのか?」

「揉んでくださるんですの?」

「後刻な」

「兄さんらしいです」


 クスクスとアリスは笑った。ところで押し付けられたおっぱいは何処に逃がせば?


「兄さんは誠実すぎます」

「単純にヘタレと評して構わんぞ?」

「真摯な紳士です由」

「面倒が嫌いなだけなんだが……」

「誰の許可が必要です?」

「少なくとも両親とか?」


 今は海外にいるけれども。


「むぅ。難しいですね」


 じゃあ諦めろ……は通じないんだろう……どうせ。


「兄さんは鬼に襲われやすいですよね」


 誰かさんのせいでな。


「でしたら私が守ってあげたいです」

「期待している」

「ハートが籠もっていませんよぅ」


 籠めたつもりもないしな。普通に考えて呪詛はそれだけで脅威だ。アリス次第では関係者全員が血の海に沈む。たとえばアリスを想っている者。たとえば俺をウザったく思っている者。その全てが呪詛感染の範囲内と言える。はた迷惑もこの上ない極め方だが、死して復活したのだ。その程度は普通にマイナス作用だろう。


「兄さんが居ますから」


 とはアリスの言だが、俺には笑えない。俺が居なければ、この都市は呪いに犯されているのだ。あるいはアリスが死んでいたか。どちらかならば後者だが、ソレでは何故アリスは呪詛を溜めるようになった? それが俺や綾花にも分からない。


「むぅ」


 ギュッと抱きしめられる。


「何か」

「兄さんは淡泊です」

「褒められてんのか?」


 どうなんだろう?


「私のおっぱいを揉んでくださりません?」

「その内な」

「前はもっと揉んでくれていたじゃないですか」

「有り得ない記録を銘記するな」


 チョップ。手刀を振り下ろした。頭を押さえるアリス。我が愛妹ながら、どんな思考地図をしているのやら。


「えい」


 アリスは俺の手を取って、パイオツに押し付ける。


「ぐっ……」


 この感触の心地よさよ。跳ねるような弾力と、沈み込む沼のような柔らかさ。その両立はあまりに奇跡的すぎる。


「あん。兄さんはお上手で」

「散々揉まされてきたからな」


 俺の意思は那辺にあれど。


「そんな兄さんだから大好きです。惚れてます。ゾッコンです。結婚したいのに出来ないのは……あまりにもどかしいです」

「一応兄妹だしな」


 それだけで完結するのもどうかと思うが、嘘ではなかった。実際に『禁じられた遊び』であるのは否定能わず。むしろそこが最大のネックだ。ヨハネとアリスは実の兄妹。そうでさえなければ、全ては解決したも同然なのだ。問答そのものに意味がないので付き合わないにしても。


「で。結局アリスのパイオツを揉めば良いのか?」


 揉み揉み。弾力と柔軟のハーモニー。巨乳で収まらないアリスの乳房はそれだけで破滅的な兵器と相成る。


「ん……ぁ……兄さん……」


 理性のタガが外れたらしい。アリスは俺にキスを求めた。受け取る俺。クチャッと唾液が音を鳴らす。フレンチなキスは、しばらく浴場を支配した。

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