第8話アイドルだって兄とお風呂に入る
「別に裸でも良いですのに」
「本気で困るから止めてくれ」
毎度の夫婦漫才。普通に俺らは一緒に風呂に入っていた。ただし水着姿で。身を清めて湯船に浸かる。
「えへへ。兄さん♪」
「何か?」
「えい」
アリスは俺の手を取ると、自身のボインに押し付けた。揉み揉み。反射的に揉んでしまう。童貞男子の哀しい
「ん……」
フニフニ。揉み揉み。水着越しに手を押さえつけられアリスの胸元に押し当てられ、
「ん……クチュ……」
唇が唇に重なった。舌が口内を暴れ回り、離れると唾液が糸を引いた。
「甘えん坊だな。アリスは」
「兄さんが魅力的すぎる事こそいけないんです」
「そりゃ悪うござんして」
他に言い様もあらじ。
「に・い・さ・ん?」
「何か?」
「良い事しましょ?」
「却下だボケ」
ペシッと逆の手でデコピン。
「あう……。兄さんはヘタレです。私の胸を揉んでいるのに」
「お前が押し付けているだけだろうが。いや、この柔らかさと弾力について否定しがたい魅力があるのも事実だが」
揉み揉み。
「あん……っ。達者です。兄さんの揉み方は……」
「いいから施術をするぞ」
「そうですね」
そのために一緒に風呂に入っているのだ。理由としては弱いが、アリスが俺にベタ惚れなのは確かなので、何処かで妥協しないと暴発する危険性もある。爆弾かコイツは。
「なわけで。抑えている手を離せ」
「はーい」
解放される。我ながら女々しくも、パイオツの感触は手に残り、残念にも感じる。妹とそう云うことを許されないと分かっても、アリス並みの巨乳となれば抗いがたい暴力だ。しかも形良く、張りがある。誰が否定できるだろう?
「で、遠回りになったが」
俺はアリスの胸元に手を沈み込ませた。谷間だ。心臓を捉える位置。
「ぁん……ふ……」
艶っぽい声。一種の嬌声だ。喘ぎ声というか天城越えというか。
治癒。超能力で呪詛を取り除く。精神を集中させたので、どれだけ時間が経ったかは、把握できない。然れども、
「はふ」
安堵するアリスを見て、施術が上手く行ったのは把握できた。
「兄さんはお上手ですね」
「妹愛があればこそ」
「滅茶苦茶にしてください!」
「気が向いたらな」
大丈夫か此奴?
「兄さんの命令になら何でも従いますよ?」
「じゃあ全裸になって警察署に『ウラキ突貫します!』って叫びながら突っ込んで」
「変な人じゃ無いですか」
「変な態勢を略して変態と呼ぼう」
あるいはサナギからの脱皮で変態。
「もっと他にあるでしょ?」
「例えば?」
「ボンテージを着せて、服従の証に足を舐めさせるとか。もちろん兄さんは首輪から繋がるリードを持って」
「何処でそう云うことを憶える?」
「ネット!」
スマホやパソコンが奇形的に発達した弊害だな。
「兄さんに服従したい。兄さんの性奴隷になりたい。兄さんにお仕置きされたいし、甘やかして貰いたい」
「甘やかす程度はしてやるよ」
「じゃあ私を抱いて」
――熟々残念な子。
「まさかお前、俺を諦めない気じゃ在るまいな?」
「だって兄さんを愛してるもの」
――むしろ何か?
エメラルドの瞳はそう言っていた。
俺は金色の髪を撫でる。
「別に離れていったりしないから、もうちょっとモラルを持て」
「無理!」
「キッパリ言い切るね」
「私だって乙女ですよ? 身体の一つは持て余します」
「だからって俺を頼らんでも」
他にも選択肢はある由。
「けれども……私が今此処に居るのは兄さんのおかげですし」
「結局そこに帰結するんだよな」
「兄さん自身は超能力者で良いんですか?」
「さて、そもオカルトにはズブの素人だし」
例えば
少しそう思う。
「ん?」
そこで思案。
「アリス」
「何ですか私の嫁?」
そ~ゆ~のはいいから~。
「死袴綾花って知ってるか?」
「クラスメイトですよね? アルビノの。磨けば光る逸材だと思いますけど……もしかして兄さん
「いや、そこで敵愾心を持たれても……」
どこまでブラコンなんだ。うちの妹は。いやもうブラコン処かヨハネイズムと呼んで差し支えない。ヨハネこと俺は嘆息する。
「治癒」
別に言葉は必要ないのだが、意識の切り替えに呪文を唱えるのは、一種の手段だった。
今度は心臓ではなく脳だ。
死袴さんはこっちに暗示を掛けたと思っているのだろう。それも成功したと。そしてそれが失敗であるのは俺だけで、アリスは普通に暗示に掛かった。であれば俺とアリスの違いとなるならまず真っ先に治癒の超能力が来る。そう思ってアリスの脳に治癒を掛けると、
「うわお」
あっさりとアリスは事象を思い出していた。
「まー、そーなるよなー」
「死袴さんって何者?」
「魔術師と当人は言っていたろう」
「ふーむ?」
ワケわかんないのはこっちも一緒だがな。今まで散発的に鬼には襲われても、死袴さんと邂逅したわけでもないんだし。オンマカシリエイジリベイソワカ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます