第6話保健室のシチュエーション


「失礼します」


 俺とアリスは保健室に足を運んだ。養護教諭がこちらに意識を割く。


「あら観柱さん」


 バレているらしい。そりゃそうだ。入学式の答辞は語り種にもなっているらしい。コッチとしては、「はた迷惑だ」であるも……それを率直に言うとアリスが嘆くので、心の中でだけツッコんでみる。


「何か用?」

「ベッドを貸して貰えればと」


「風邪?」

「霊障です」

「れいしょう?」


 あえて言葉を選ばなかった。これくらい直球の方がむしろ誤魔化すには丁度良い。


「風邪の親戚とでも申しましょうか」

「はいコレ。体温計」

「熱ではないのでいりません」


「サボりじゃ無いでしょうね?」

「多生徒に感染して良いなら此処は引きますよ?」

「わかりました。受け入れます。それで風邪はどっち?」


「アリスの方です」

「観柱くんはコーヒー居る?」

「ええ。では頂きましょう」


「兄さん」

「とりあえずベッドに寝れ」

「はいな」


 ボスンとベッドにダイブするアリス。


「ふにゃん」


 シャッとカーテンを引いて隔離空間を作る。呪詛払いに関しては刺激が強すぎるので、こう言った形を取る。なんか保健室でエッチなことって学園モノのエロゲーみたいだ。普通にシャレになっていない辺りがアリスニズムなのだけれども。


 ブレザーを脱がせる。ネクタイを解き、シャツを脱がせる。豊かな胸が現われた。ポヨンとしてフニュンとしている。触れてみると熱く滾っていた。


「ブラジャーを外してください」

「フロントホックな。用意が良いのは認めるが、下手すりゃ揃って退学だぞ」


 巨乳仕様のブラジャーですら支えきれない質量体よ。あまりに暴力的な光景ではあれど、その気にならないように自制していた。オイタをすると学校問題に関わってくる。


 なので、


「ん……ぃ……」


 煩悩を追い払い一意専心。ボインバインのパイオツの谷間に手を沈み込ませる。


「えい」


 その手が挟まれた。左右の乳房によって。おっぱいを両手で押さえ込んで、俺の手をフニュンと挟み込む。これが男根だったら……いや、止めよう。生産性が無い。というか失産性がありすぎる。


「興奮しますか?」

「お前だけが停学になるなら何をしても構わんが、この場合に於いては俺の心証が悪くなるので止めろ」

「兄さんはつまりません」

「妹のおっぱいはそれなりに評価する。単に責任が取れないだけで」


「捨てるのですか?」

「ここで放り投げると神鳴市が呪いに沈むぞ」

「あー」


 自覚はあるらしい。


「なので霊障を取り除く。よくもまぁ心臓にソレだけ呪詛を溜めながら死なないもんだな」

「兄さんのせいですよ? 正確には『おかげ』ではありますれど」


 そゆことになるよな。殊に反論も思いつかなかった。治癒の異能でアリスの霊障を取り除いていく。少しずつ呪詛は溜まっていく税金のようなモノだ。あるいは欲求か。どこかで消費せねばならない。この場合は俺。類感感染呪術の応用で、こっちに呪詛を取り込んで無かったことにする。


「ぁ……ぃぃ……」


 ――官能的な声を出すな。


 とは思うも、まぁ確かに淫靡な光景だ。女子の胸元に手を突っ込んで、乳房に挟まれてズリズリ。カーテンで仕切っているので一応プライベートは確保されているも、中々スリルがあった。


「兄さんは誰かにバレそうってシチュエーションに萌えるんですか?」

「簡潔に…………お前が言うな」

「えへへ」


 笑って誤魔化せられると思うなよ。許してしまうのは俺の弱さとしても。規定値以下まで呪詛を取り除き、快癒させる。


「やっぱり学校生活がストレスになっているのかね」

「象牙の塔に籠もるべきでしょうか?」

「どうだかな」


 それそれで味気ない。


 折角七十分の一の確率で日本人に生まれたんだから、愉しむのも青春だろう。


「コーヒーはブラック? 砂糖とミルクはあるけど」

「ありありで」

「私も~」

「はいはい」


 養護教諭は甘いコーヒーを淹れてくれた。


「甘露甘露」

「それで何だったの? 風邪にしてはスッキリした顔をしているけれど」

「持病持ちなんですよ」


 あながち間違っていない辺りが悲しいけれども。いや、可哀想という意味ではなく残念無念の意味で。アリスが大好きな兄さん――俺のことだ――に合法的に裸体を晒して、胸元に手を突っ込んでくれるのだから至福なのだろう。実際グラビアアイドルより大きなボインは破壊力満点だ。俺が俺じゃなければ襲っている。


「兄さんのエッチ」

「アリスのスケベ」

「ドスケベです」

「開き直るな。頼むから」

「面白い兄妹ね」


 コーヒーをブラックで飲みながら教諭は笑った。


「いつもエッチなことをしているの? ソレならソレで問題があるんだけど」

「一応医学的な処置をしているだけなので。セクハラかも知れませんが、そんなことを言えば産婦人科もセクハラでしょう」

「そうねぇ」


 天井をボンヤリ見ながら養護教諭。


「時折使わせて貰って構いませんか?」

「それはいいわよ。生徒に支障が出たら、ソレを助けるのが養護教諭だし」

「お手数掛けます。それからコーヒーのお代わりを」

「私も~」

「うーん。青春だなぁ」


 授業をサボって飲むコーヒーの美味しさよ。生徒の鏡とはとても言えない俺だが、その辺のモラルは何処かに落としたらしい。別に持っていないと困るモノでも無いので放置はしているも、それはアリスも一緒で。なんとなく慕情と好意の食い違いがあった。


「兄さんのコーヒーにおっぱいミルクを入れてあげられるといいんだけど」

「どう思います教諭」

「末期ね。たしかに観柱さんは巨乳だけど……観柱くんは揉んだことが?」

「ラッキースケベでなら」


 我ながら、それもどうよ?

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