第46話

あれからどれ位の時間が過ぎたのだろう……


俺達の子供が生まれ、一年が過ぎようとした頃……

薬が完成した。


深雪は、子供を抱き締め、俺の顔を見つめた。


「プスリと刺してね……

 痛くないように、プスリと……」


苦笑いを浮かべながら深雪は、俺にナイフを渡した。


「待てよ・・・

 銘を救えばいいだけだろう?

 どうして、お前を刺す必要があるんだ?」


「最初に約束したでしょ・・・」


「だけど・・・」


「それにね、確かに、過去は変えれるようになったけど……

 それって、やっぱいけない事だと思うの……」


「いや、でも……」


深雪は、悲しそうな笑顔で、口をつむった。

その時、あの時の銘の姿が脳裏を過ぎった……

銘は、あの時、どんな心情だったのだろうか・・・

俺は、ゆっくりと口を開いた。


「……わかった」


「約束だよ……」


深雪の痛みが痛い程感じた。

そして、その優しさが……

俺の心を刺激し……

そして、涙がこぼれそうになった……。


俺は、それを誤魔化す為……

深雪と唇を重ねた……


永い永い時の流れの時間が、走馬燈の様に蘇る……

俺の涙が止まるその時まで……

深雪の涙が止まるその時まで・・・

唇を重ねた。

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