第40話


その日の夜。

銘の時は、無言の食事会だったのに対して、深雪の父親とは夜遅くまで酒を

飲み交わした。

水族館で、俺と初めて会った時の話をしてくれた。



酒のせいなのか、乱れた服から覗く谷間。

しっとりと柔らかそうに光る唇。


深雪が少し前屈みになった時、俺は顔を逸らしてしまった。


「恥かしい時は、顔をそらすんだよね……」


深雪は俺を抱き締め、耳元で優しく囁いた。


「伸二、私に隠し事しているよね?

 それとも、何か、ずっと悩んでいる……

 うんん……

 ずっと何かに苦しんでいる……」


深雪は声はハッキリとした口調で言った。

深雪の胸の音が俺の胸を通じて鼓動が聞こえる。

優しく抱き締めているのに、腕はしっかりと固まっていた。


「ねぇ……

 もし、伸二が他に好きな人が居るのなら私は伸二の事を諦める……

 もし、まだ、気持ちの整理が着かないのなら、私は待つよ。

 伸二の気持ちの整理が着くまでずっと……

 伸二が何に悩み、何に苦しんでいるのか正直わかんないけどさ……」


深雪は、震える手を押さえる為に腕を力強く固めている……

それは、自分の不安を俺に解らない様にする為……

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