第30話



何も無かったように日が過ぎて・・・

何も無かったように会社に来て……

何も無かったように深雪と愛し合う。


仕事に行けば研究に没頭した。


まるで、銘を救うことが出来なかった事から逃げるように・・・


もう一度、薬を作るか……?

だけど、銘救えば深雪が死ぬのだ。

そして、深雪を救えば銘が・・・


俺の中で、何かと何かが戦っていた。。


「ねぇ……

 最近元気ないよ?」


ベットで横たわる俺を見て、深雪は心配そうに俺の目を見つめた。


深雪の目は、不安の色で満ち溢れ、そして今にも涙を零しそうだった。


「そんなこと……ない」


「嘘……

 私にプロポーズした次の日から少し元気が無いよ」


「…………」


何も言い返せなかった。

何も浮かばなかった。


出来た事と言えば、キスをして誤魔化す事だけだった。

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