第23話


「おウチの電話番号とかわかるかな?」


若いスタッフの質問に美穂ちゃんは、首を振った。

美穂の持ち物と言えば、小さなクマのぬいぐるみが、ひとつだけ……


「警察に連絡しますか?」


スタッフの誰かが言った。


しかし、迷子の可能性も捨て切れず、警察に連絡という訳にもいかなかった。


すると、この状況に不安を感じたのか美穂は、深雪のスカートの裾をひっぱった。


「どうしたのかな……?」


と、深雪は美穂に目線を合わせて尋ねた。


すると美穂はクマのぬいぐるみの背中のファスナーを開た。

そして、美穂はそこから携帯電話を取り出した。


「これでママとお話できるよ♪」


と、満面な笑みを浮かべながら深雪に携帯電話を渡した。


スタッフの人が深雪からその携帯電話を借りた。

そして、すぐにその子の親に連絡を入れた。


そして、暫く電話のやりとりが続いた。


電話を担当したスタッフが、泣きそうな顔をして話しかけて来た。


「『夜に迎えに行くからそれまで、預かって欲しい……』

 と言われまして……

 その、断ったのですが、一方的に電話を切られてしまいまして」


「あのよろしければ暫くここにいますよ?」


深雪が、そう言うとスタッフは苦笑いを浮かべながら言った。


「折角のデート邪魔しちゃ悪いので・・・

 ここは、私がやりますので楽しんで来てください……」

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