第14話

その商品には、値段が書かれてはいなかった。



一流のレストランの商品には、値段が書かれていないと言う……


【深雪スペシャル】


それも、それと同じく高価なモノなのだろうか?


目の前に出て来たもの……

それは、チャーハンだった。


「……………………これは?」


「チャーハン♪」


深雪が、満面な笑みで答えた。


「チャーハン?」


「『深雪スペシャル』は、前に私が頼んだモノが出るんだよー」


なんで、そんな意味不明な商品をここは、置いているのだ……?


「ごちそうさま」


深雪は、そう言うと手を合わせた。

深雪は、もう自分の分を完食したらしい。



「慌てなくて良いからね……

 ゆっくり食べてね♪」


そう言いながら、深雪はじっと俺の食べる様子を見つめていた。


休みの日には、一緒に遊び。

仕事でも、ほぼいつも一緒に過ごしていた。

俺が未来から来た事すら、忘れた頃。


その日がやって来た。

深雪の指輪を買った日……


ジュエリーショップの店員が俺に話しかけて来た。


「プレゼントですか……?」


「……はい」


店員は、ニッコリ笑いながら、色々質問をしてきた。


「歳は幾つくらい?」


「指の太さは?」


「お仕事は?」


「肌の色は?」


「誕生日は?」


この質問は、今も鮮明に覚えている。


俺は、一呼吸入れて質問に答えた……


「婚約者指輪なのですが……」


…………………………

……………………

…………

……


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