第12話


俺は、全ての作業を終えた……

と言っても、この時期は、結構暇な訳で……


今年のインフルエンザの薬を開発する位しかなかった……


「深雪、手伝う事あるか……?」


深雪は、振り向くと驚いた顔で俺の方を見た。


「え?レポートは??」


俺は、得意げに、レポートを深雪に見せた。

深雪は真剣な顔で、レポートを見た後、クスリと笑った。


「ご苦労様♪」


そう言って、レポートを返してくれた。


「私も、もうすぐ終わるから……

 手伝いはいいよ。

 加藤さんも、終わったし、フミちゃんと西村君の二人もさっき終わったって言ってた……」


みんな、仕事が早い!


という事は、これから薬を実験動物に投与して、報告書を待つ事になるのか……


となると、暫く暇になるな……


俺らは、成分開発の研究が主な仕事であって、薬の調合は、別の部の仕事……


確か、その部と合併した時に、銘と再開したんだったな……


俺は、とてつもなく、銘の事が気になった……

未来の俺と仲良くやってるかな……


そんな、事を考えて居る間に、昼を知らせる予鈴がなった……。


「じゃ……そろそろ行くか♪」


深雪が、楽しそうに俺の腕にまとわりついた。


「今日は何処で食べる?」


と尋ねると……


「資料を届けるのが先!」


と、深雪に怒られた。

俺は、トボトボと生物管理課に向かった。


そこで、加藤さんの甥の加藤燕君に渡せば完了となる。


「すみませーん」


俺は呼び鈴を鳴らして、燕君を呼んだ。


「あいあい……

 資料を持って来てくれたんですね?

 ありがとうございます。」


と、親父さん譲りの変わった口調で対応してくれた。


「今は、大学二年生だっけ?」


と、深雪が尋ねると、燕君は、指を一本立て一年ですと答えた。


「では、ありがとうございました……」


と軽くお辞儀をすると、姿を消した。


「忙しかったのかな?」


と深雪が呟いた時、俺はふと思い出した……

動物管理課だから、管理する動物もご飯の時間なのか……

深雪に、それを伝えると、クスリと笑って……


「そっか……

 そうだよね♪」


と言った。


俺らは、そのまま食堂に向かった。

今、俺は死ぬ前の深雪と話している。

対策を考えなければいけない……

プロポーズを延期する……

それが一番だと思った。



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