第11話

深雪は、薬学の知識、そして才能があった。


俺が、運の人なら深雪は天才だ……


一度、薬品に手を触れたなら、いつもの口調が嘘のように、丁寧になるのだ……


「さぁ……伸二。

 貴方も、早く持ち場に戻って下さい。

 あと、染色体の細胞分裂の報告書も忘れずにおねがいします。」


深雪が、若くしてプロジェクトリーダーを勤めている。


俺とは違い、やっぱり優秀だと思いながら……


パソコンに向かって、レポートの記載に勤しんだ……。


俺は、暗記が得意だった。

一度見たら、忘れられない位、暗記力があった……

そう言えば、俺は深雪の隣りに居たくて、薬学の道に進んだんだっけな……

と懐かしみながら、文字を入力して行った。

覚えて居る内容を入力するだけだったので時間は、さほど掛からなかった。


レポートを、書き終えると、実験マウスの所に向かった。


何年立っても、このネズミが可哀相だと思う……


背中に耳まで生やして……

背中に耳?


俺は、驚いた。

どうして、俺のマウスの背中に耳が……?


俺が驚いて居ると……


「すまない、すまない……筋力増加剤を開発していたんだが……

 マウスが逃げてしまってね……」


「それは、構いませんが……

 なぜ耳が??」


「廃棄される所だったんだのでな……

 勿体ないから連れて来た。

 耳は、移植用だとさ……」

 

そうか、そんなのあったなぁ……


「へぇ……」


俺は、そう声に出した。


「それより、お前さんレポートは?」


「完璧♪」


俺は、グッドサインを加藤さんに送った。


マウスの方は特に問題はなく、特に報告すべき事はなかった為……


俺は、深雪の様子を見に行く事にした……。



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