第42話 ハードル高そう!
今年は、クリストファー様に合わせて歳の近い貴族の子息子女が入ってきたせいで、特に生徒の年齢がバラバラになっている。
多分、それはゲーム的な裏事情ってやつで、年齢幅が広いイケメン達と同じ学年になれて、恋愛をメインに普段の学園生活も楽しめますよというのを売りにするためだった。
実際に式に出て、周りの子達を見ると大人っぽい人も多いんだよね。
そして攻略対象以外の、いわゆるモブキャラ達も、やたらと顔面偏差値が高いですけど!?
何この派手な美少年、美少女軍団はっ。もう、モブの役割放棄してない? 全然、背景に溶け込んでないよっ。
わたしって、まだ色々とこれから成熟しますって体型なんだけど、大丈夫かな。
この年齢での一歳差って結構重要じゃない? 恋の駆け引きとかも有利そう……どうしよう。ちょっと不安になってきちゃった……。
だって、初めて見るクリストファー様はまるで、ゲームや少女漫画から出てきたような人で、手が届かないんじゃないかって思わせる雰囲気の人で……オーラが違うというか……人気があって当然って感じなんだもん……。
その点、シリル様やフレデリック様はまだ、侯爵令息と伯爵令息だからハードルは低いはずだよねっ。
まずはそっちから攻略しようかなぁ?
ヒロインであるわたしが十三歳の時に舞台の幕が上がって、十六歳誕生日を迎えた時には攻略完了で恋が成熟する。
そこまでの過程を楽しむ訳だけど、彼等二人は最後まで同級生として一緒に通えるから、一番出会いイベントが起きやすいんだよね。
シリル・レジーナ侯爵令息は、ヒロインより一歳年上。
悪役令嬢であるヴィヴィアン・カーティス公爵令嬢の婚約者でもある。
長男が騎士団に入ってしまった為、次男だが次期侯爵になることが決まっている人で、冷静沈着なタイプ。
青味掛かったストレートの銀髪と、切れ長で少し吊り上がった紫の瞳に銀フレームの眼鏡をかけたクールビューティーで、成長すると氷の貴公子って呼ばれるほどの冷たい美貌の持ち主だ。
そして、このシリル様の婚約者ヴィヴィアンっていうのが悪役キャラで、どのルートでも絡んできては攻略を邪魔してくる。
ヒロインの直接的なライバルで身分制度の象徴のような人。
厄介なんだけど、彼女にいじめてもらわないとストーリーが進まないから、必要悪って感じかな? 好感度上げの為にも上手く利用しなきゃいけない。
シリル様をターゲットにした場合は、より一層、絡まれ率が上がるし、彼本人も、序盤はヒロインの貴族令嬢らしくないところが気に入らなくて、きつめのお説教とかしてくるし心が折れそうになる。
でも、それを我慢してプレイしていくうちに、一生懸命に頑張るヒロインの姿を見て次第に態度が軟化していきデレるんだよっ。
あの、表情筋が死んでるんじゃないかっていうほどの彼が、ヒロインに向かって仕方がないなって風に微笑む場面は最高だった! 好き!
そして更に、一定数まで好感度が上がると、礼儀作法とかダンスとかを教えてくれるイベントがいくつか発生するようになる。
わたしは断然、シリル様とのダンス狙いです! だって生身の、本物のシリル様だよ!? これは、踊ってもらうしかないでしょ!
シリル様と並んでフレデリック・サクス伯爵令息も人気あったよね。
エメラルドのような煌めく緑の短髪に、優しげな金茶色の瞳。人懐っこい笑顔が素敵な弟キャラ。
同学年だからか、彼等二人は仲が良くって一緒に行動する場面も多かった。そんな時は、より弟キャラが強調されてて可愛いのっ。確かフレデリック様の方が一つ年下なんだよね。
リリアンヌ・マリー侯爵令嬢の婚約者で魔法大臣の三男だから、仲良くなると魔法関連のイベントが起きる。
光魔法を上手に使いこなせないヒロインに、直接指導してくれるようになるの。
夕暮れ時の教室で二人きりとか……あのノスタルジックなスチル、良かったなぁ。
この二人は同時攻略がしやすいキャラで、友人と同じ人を好きになってしまったと葛藤する姿とかもおいしかった……愛と友情のどっちを取ればいい、みたいな?
そしてヒロインは苦悩を抱えたタイプの違うイケメン二人に、君はどちらを選ぶんだって情熱的に迫られるんだよっ。素敵!
そんなのどうしたら……一人に絞るとか無理っ、選べないよね!?
究極の選択じゃない!?
でもそんな貴女に朗報です、抜け道があるんですよ!
なんとこの乙女ゲームには、逆ハーレムルートが実装されているのです!
フフフッ、片方だけ選ばなくってもいいんだ。
もっと言えば二人に絞る必要とかもないから。
だって逆ハーレムOKなんだよ!? 主要攻略対象五人全員選んでもいいってことでしょっ。
まあ、さすがにこのルートは難しすぎて、クリアしたことなかったんだけど。
条件、厳しいんだもん。うんと頑張って、ヒロイン自身の努力で学力や魔力、各種能力値やパーソナルレベルをカンストまで総上げして『光の乙女』っていうのにならないといけないから、相当大変なんだ……。
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