第17話 授業が面白いって素敵!
黙っていればビスクドールのように美しい、婚約者のシリル様に待ち伏せされ、冒険者として活動する場合は同行すると強く約束させられてから早三日。
その間、学生らしく魔法学院の授業に出席したり、ヒロインの情報収集をしたりして充実した日々を過ごしていた。
何しろ、前世を思い出してからは特にだが、魔法関連の実践授業が楽しくて仕方がないというか、面白いのだ。
それはフレデリックも同じようで、二人してファンタジー要素満載の科目…… 魔法理論や魔術実践などを学べる魔法学や、薬草学、精霊学、錬金学を率先して取ってしまった。
その中でも、魔法学の授業は二人にとって衝撃的だった。
魔術の発動には色んな方法があり、一つじゃないことを始めて教わったのだ。
言葉にすることで発動しやすくなる人や、心の中で唱えるだけで出来てしまう人、魔方陣や杖などの道具を媒体にした方がいい人などがいて、どれもが正しくやりやすいほうで構わないとのこと。
魔法を形にする引き金には個性が出て当たり前という考えで、スムーズな魔力操作とイメージ力の方が大事だというのが面白かった。
「こんなの、専属教師は教えてくれなかったよね」
「そうですわね。私も型通りの呪文を唱えることを求められました」
でも確かにいざ実戦という時、声に出して攻撃魔法を唱えていたら、戦法が筒抜けだし有効打にならないだろう。
奇襲とかも完全に無理だし、焦って噛んだり噎せたりしたら失敗するし……。
私達貴族の場合は、前線に出て活躍することはまずなく、後方支援が主な任務だから、貴族家に招かれる家庭教師達は、効率よりも形式美を重んじるという貴族の子弟に必要な方法しか教えなかったのだろう。
早速ヴィヴィアンは、頭の中でどんな魔法がいいかイメージして発動してみた。
得意な属性は火なので、性質や強度等を想像してみた上で発動させてみたら、思いの外上手くいった。専属教師達との訓練は何だったのかと言う呆気なさだった。フレデリックも同じく呪文無しでの発動に成功し唖然としていた。
やはり、前世の科学知識を持っているため、具現化が容易くなったのかもしれない。
「何にしろ良かったよ。あの恥ずかしい中二病も真っ青の呪文を、二度と唱えなくとも良くなって」
「本当ですわね。記憶が戻ってからは気恥ずかしくて堪りませんでしたもの」
「分かりますっ。前は何とも思わなかったのですが、今の僕にはあの呪文ってキツイです。正気では言えません」
「分かりますわっ。ゲームとしてならよくても、ここは現実ですし無理ですわよね。恥ずかしさでその……燃え尽きそうでしたわ……」
「ええ、そうですよね。いやぁ、アレから解放されて本当に良かったっ」
王立学園にいては学べなかったであろう思わぬ副産物に、上機嫌の二人だったのでした。
その他の教科……例えば錬金学は、希少薬やアミュレットの製作、アクセサリーや武器への魔法付与など、幅広く使えるので需要は高い。
その分習得が難しく、魔力やパーソナルレベルの高さも必要になってくるというので、益々、冒険者登録をした甲斐がある。頑張って鍛えようと思った。
薬草学も、ただ薬を作成するだけではなく、いずれは薬膳料理なども教えてくれる。
その料理が魔力の底上げを図るのにお得で、作っても食べても経験値が付くという一石二鳥の学問なんだと聞いた。これもまた、今から習うのが楽しみな教科である。
精霊学については、例のエルフ族の学長自ら教えてくれるらしく、やはり毎年希望者が多いんだとか。
その為、より専門的で具体的な実践授業を行う事になる来年以降に、継続して参加するには幾つかの条件があった。
まずは今年一年の座学で上位成績を取ること、その上でやはりここでも、魔力総量の多さとパーソナルレベルの高さを求められ、この三つの条件を満たした生徒のみ、稀少な権利を受け取れるようだ。
「これは頑張らないといけませんね」
「ええ、守護精霊と契約する為にも学長様との繋がりは必要ですものね」
「そうですね。ヒロインちゃんに対抗する為にも、出来るだけ強くなっておかないと」
乙女ゲームでは、ヒロインがお助けアイテムとして、好感度の上がる魔道具や薬草等を購入し攻略に使っていたが、今思えばあれは魅了の魔法が掛かったものだったのかもしれない。
ゲームの世界ならともかく、この国では今、そういった精神汚染系のアイテムは使用が禁止されているはずだ。
しかし、彼女に関しては主人公補正が働いて、あっさりと手に入れてしまうかもしれないという、危惧がある。
詳細を覚えていない二人としては、まずは魔力総量が多い者には精神汚染系のアイテムも効きにくくなるという原理を生かして自身を鍛え、強くなることを目指す。
その上で、お助けアイテムに必要だと思われる錬金術や薬草学などの知識を、手っ取り早く自分達で学んで理解に努めることにしたのだ。
――上手くいけば、魅了などの精神汚染を妨害できる魔道具を、製作出来るかもしれない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます