第18話 四人で一緒に
「しかし、錬金学にしろ精霊学にしろ習得するには魔物討伐をしてパーソナルレベルを上げないといけないですからね。しっかり時間を管理して、少しでも長く冒険者としての活動時間を作らないと」
「ええ。こうなると、同じ学院で同じ教科を取った事は良かったですわね。時間を合わせやすいですもの」
「そうですね。後はシリル様とも出来るだけ予定を合わせて……って、あぁ、そうでした。実は僕、ヴィヴィアン嬢に言わなきゃいけないことがあったんでした」
「何ですの?」
「いや、先日、シリル様と一緒に冒険者登録したことをリリーに知らせたところ、彼女、自分もやると言い出してですね。もう冒険者登録も済ませてしまったようなんです。なので、四人で依頼を受けて活動するってことにしたいのですが……いいですか?」
「まあ、そうだったんですの。もちろん構いませんわ」
リリアンヌ様も、シリル様の他にも戦闘メイドや侍従がいるとはいえ、ご自分の婚約者と
ただ冒険者は、深窓の貴族のご令嬢がするものではありませんから、そこは少し心配ですけれども。変な噂が立たないよう変装は完璧にしないといけませんわね。
「良かったです。じゃあ、今日は約束の三日目ですし、昼食を済ませたら冒険者ギルドへ行きましょうか」
「そうですね、よろしくお願いしますわ」
◇ ◇ ◇
今日は午前中に授業があったため、自由時間は午後からの数時間だけだ。
時間が惜しいのでギルドの近くまでは馬車で向かうことにする。極力目立ちたくないと、実用重視の木製の馬車一台を用意し、フレデリック達と相乗りすることでコンパクトに移動する事に成功した。
前回、メイドと執事を連れた魔法学院の生徒という、えらく目立つ格好で乗り込んでしまった点も反省して、全員が一見平民に見える服装を取り揃えた。
丈夫なのが取り柄の地味な色合いの服だが、前世の記憶がある二人は何か落ち着くなぁと心の中で密かに思いながら、抵抗なく袖を通す。素朴な見た目に反して着心地は良いいのも嬉しかった。
一応、下には魔法糸を織り込んだ、そこんじょそこらの甲冑よりも頑強で高価な下衣を着込んでいる。
これは防御の為にも絶対に来てくださいとメイド達から強く押し付けられたものだ。見えなければセーフだろうと、大人しく従った。
革製の胸当てや籠手、頑丈なロングブーツや魔法使い用のローブなどの他にも、短剣や弓、剥ぎ取りナイフなども華美でない実用的なものを用意してもらい、装備していく。
出来上がったのは、ギルド登録したばかりの初心者には過ぎた格好の若者達の一団だったが、アリスによると、まあ小金持ちの庶民ぐらいに見てもらえるだろうということだった。
「あれからギルドの依頼を調べましたところ、僕たちが受けれる依頼だと今現在大発生している水路に湧いたスライム退治があるようです」
「まあ、スライムですか」
「ええ。これなら街中ですから移動時間がかかりませんし、今は何時でもギルドで受理してくれるそうですからいいのではと、シリル様も賛成なさっていまして……」
ギルドに着くまでの間、馬車の中でフレデリックが今日の方針を話してくれた。シリル様も賛同済みなら丁度いい依頼なんだろう。
「お調べいただきありがとうございます。
「良かった」
F級冒険者には、魔物退治の依頼は少ない。貴重な討伐依頼と言えた。この国には緩やかに四季があるのだが、スライムというのは冬季以外の気温が高くなる時期に突発的に増えてしまう傾向にあるらしい。今年に入ってからは初めて観測されたようだ。
大量発生したばかりならまだ最弱だろし、初戦の相手としては丁度いいだろう。
魔物を倒した事で得られる経験値は、スライムだと微量なので、発生直後だとF級冒険者以外には人気のない依頼らしい。なのでこの時間でも残っているんだとか。
「初動を間違えるとスライムってどんどん強くなってしまうからね」
「そこがスライムの厄介なところですわよね」
「うん。何でも食べてしまうし食べたものの力を取り込んで、どんどん成長してしまうからね。ギルドとしては早く封じ込めたいだろうし」
「はい、強くなる前に倒しきりたいですわね。門限までの限られた時間ですが頑張りましょう」
「うん、そうだね」
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