第4話 今日からニューゲーム 其四

 波乱を生みかけた昼休みを終えた俺は5、6時間目をうつらうつらと船を漕いでいるうちに何とか終わらせて、無事に放課後を迎えた。

 よっしゃ、このまま直帰じゃいと意気込んでいたのも束の間。悪夢を知らせる校内放送が流れた。


『1—Aの周藤慧太君。至急生徒会室までお越し下さい。――繰り返します……』


 うーん!?今度は一体なんだ? というかなんでこんなにイベントごとが起きるんだ? もしかしてこれが『主人公』補正ってやつなのか?だったらいらねぇ、お引き取り願うぜ。……ああ、嫌な予感しかしない。


 いろいろな感情が渦巻く中、俺は重い足を引きずりながら、渋々生徒会室に向かうことにした。


*** *** ***


 ――生徒会室前。

 一見すると校内によくある部室部屋のようだが、俺には分かる。

 ここはヤバい。だって、先ほどから滅茶苦茶怖気がするもの。尋常じゃないよこれは。心なしか部屋の隙間から邪気が漏れている気がするもの。ああ、怖い。

 もういいや。生徒会室までは一応来たし帰ろ。誰も文句ないだろ、うん。


 一人頷いた俺は額から流れる汗を拭うと、そのまま踵を返しクールに去るぜ……と行きたかったが束の間、背面から物凄い力で肩を掴まれた。


「ファッ……!? って、イタタタタァッ!!」


 思わず、世紀末救世主が秘孔を貫く時の奇声にも似た叫び声を上げてしまったが、恥ずかしさよりも怒りが先行した。チキショー誰だよ一体!


 妖怪もびっくりな勢いで後ろを振り返ると、そこにいたのは可憐な少女のような見た目とは裏腹に大魔王の様な本性を持つ御仁。そう――鬼ヶ埼先生である。


「……いきなり何するんすか!肩がカップアイスの一口みたいにもがれるかと思いましたよ!」


「その例えは今一つ分からないけど、いつまでもドアの前にたむろするお前が悪い。とっとと中へ入れ、生徒会長様がお呼びだ」


「……はてさて何のことやら。それに鬼ヶ埼先生に言われるゆえんはないですよ」


肩を竦めてやれやれと両手を上向きに広げる。俺は全力で白を切ることにした。


「知らなかったのか?私からは逃げられない。そして残念だったな、私は生徒会副顧問だ」


 さいですか。いやまぁ知ってましたとも。それでも抗ってみたかったのです。だって、男の子だもん(はぁと)

 軽く精神を破壊されながら、鬼ヶ埼先生に首根っこを掴まれた俺は、生徒会室、その暗い扉の奥に足を踏み入れる。


 そして、次の地獄が始まるのです。








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俺が主人公に選ばれた件について ガミル @gami-syo

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