第37話
ーー 一方その頃 依頼斡旋所 ーー
「良い依頼は無いかなあ......あ、この井戸に住み着いたスライムの討伐とか良さそう。」
「コウイチ君、良いのあった?」
「あ、イナホ。このスライム討伐とかいいと思うんだけどどうかな? 」
「スライムって怖いんだよ。物理攻撃が効かなかったり、狭い所に入って行けたりして。」
「弱いイメージがあるんだけどなあ。」
なんだかんだでイナホからもゴーサインが出る。
ユキヤ達に少し遅れて依頼斡旋所に来た俺達。どうせだから二人で組もうと言う話だった。三人はどんな依頼を受けたのだろうか。
受付に依頼書を出す。
「ありがとうございます。『村の井戸に住み着いたスライムの討伐』をコウイチ様とイナホ様のお二人での受注でお間違いないですか?」
「大丈夫です。よろしくお願いします。」
「はい、登録しました。無事の依頼達成をお祈りしています!」
受付係の女性の声援を受け、依頼斡旋所の扉を開ける。
「......すいません、定期馬車の時刻表ってありますか?」
受付係の女性は苦笑いをしてしまった。
ーー ディジシーディ村 ーー
王都から定期馬車で北に二時間、依頼のスライムが居着いた井戸のある村、ディジシーディ村に着いた。
家はしっかりとした柱に塗り壁の家がほとんどで、人通りも多くこの間のノニ山中村よりも町に近づいた印象を受ける。
依頼人は村の宿屋の女将さんである、ミーテという女性だ。
ミーテが経営する
「ごめんくださーい、スライム退治の依頼を受けて来てのですが.........」
カランカランと鳴るベルの着いたドアを開け、赤レンガの宿へと入る。チェックインカウンターには、四十半ばといった程の女性がいた。
「あらいらっしゃい......って勇者様!? 勇者じゃないですか!! まさか伝説の勇者様が私の依頼を受けてくださるなんて。今夜はお泊まりで?」
「ええ、そのつもりです。」
現時刻が(地球基準で)午後四時位だ。ここからスライムを倒して馬車に乗るのは難しいだろう。
「申し遅れました、私はこの三輪の宿を営んでおります、ミーテと申します。」
「雷の勇者、イナホです。」
「光の勇者のコウイチです。ミーテさん、まずそのスライムが居着いたという井戸に案内して貰えますか? 」
「はい喜んで。この建物の裏手にある井戸です。着いてきて下さい。」
ミーテに連れられ宿屋の裏まで行く。
そこには洗濯物でも洗うのか、石で出来た流し台と、レンガと黒い鉄の扉と煙突で作られた
中を除くと暗くて色も外径も分からないがテラテラと蠢くモノがいた。アレがスライムで間違いないだろう。
「どうするコウイチ君? 」
「とりあえず部屋に行って作戦会議をしよう。ミーテさん、部屋までの案内お願いします。」
「あいよ......じゃなかった、かしこまりました。スイートルームとは行きませんが、最高の部屋を用意させていただきます!! 勿論お代は結構です。」
「口調も部屋もいつも通りで大丈夫ですから...... 」
そうして鍵を渡され案内された部屋は広々とした二人部屋だった。
部屋に着いて荷物を置くなり、即座にソファに向かいで座る。
「早速第一回スライム討伐会議を始める。」
「ドンパフー、これで満足? 」
「乗ってくれただけでかなり満足。ありがと。ゴホン......それはさて置きスライムの倒し方だけど現状情報が少なすぎるからなんとも......」
「スライムってお日様の下に出れる魔物だったっけ? 確か違うよね。頭悪そうだし日の下におびき出せるかな? 」
「いや無理だろう。頭は無くても本能や習性で日の下には来ないと思う。」
イナホは顎を手で支え悩んだ素振りを見せる。
「じゃあ井戸の中に私が電撃バリバリしたりコウイチ君のビーム撃ち込んだらいいんじゃない? 」
「スライムが毒も何も持っていなければそれでいいんだけど、持ってた場合井戸が使い物にならなくなるから。少なくとも井戸の外に引き摺り出さないと。けどどうすれば引き寄せられるか。」
イナホが閃いたのだろうか明るい表情になる。
「桶を使えばいいんじゃない? 底にスライムの餌とかなんとか入れて。入ったら引き上げれば完璧じゃない!?」
「いいよそれ採用!! 決行は今夜だ!! 」
とりあえずの方針は決まった。頭を使って少し疲労感がする。
「ん〜、戦う前にサッパリしたいな。」
「私も。風呂って部屋の中に......あったあった。シャワーとタブだけなのね。まあいっか。」
「......ん? あっ!! 」
とんでもない事に気が付いた。
「イナホ。」
「なに? 」
「ここ二人部屋だ。」
「あ.........」
気まずい沈黙が続く。
「も、もう一部屋借りて来るよ。」
「いや、折角タダでいい部屋貸してもらったんだから。うん。わわ、私なら大丈夫よ。」
「じゃ、じゃあそういうことで.........」
「私先にシャワー借りるわね......」
「どうぞ.........」
広い二人部屋の中はシャワーの音だけが響いていた。
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