六勇者邁進
第30話
ーー 翌日 王都ククリア正門 ーー
毛皮の敷かれた馬車のシートに雑魚寝した自分達は起きたら既に王都の正門が見える所まで帰ってきていた。
王都に着いた自分達はまず
「うーん、帰ってきたぞ王都!!」
「ノニ山中村行ってたのほんの数日だけなんだけどね。確かにちょっと久しぶりな気がしないでも無いな。」
なにせ少し死を覚悟したのだ。あそこでの時間は早くも濃密な物だった。
「皆様おつかれの所悪いっすケド、一度陛下の前に集まって貰いたいんス。今後はそうそう無いと思うんスけど、どうも初の魔物退治をしてから志の変化とか無いかとか聞きたいらしいんで宜しくです。」
「分かりました。今すぐが良いですか?」
「ん?えー、あー、そうッスね。今すぐでいい、今すぐが良いと重います。」
ーー ククリア王城 玉座赤道の間 ーー
「
「ありがとうございます、国王陛下。」
今回は周りに貴族の重鎮達も居らず、ストリクス王と数人の守護が立ち、自分達がその前に跪く僅かな人数で、赤道玉座の間は一層、広く感じられた。
「ところで勇者たちよ。魔物を連れて帰ったそうではないか。」
ストリクス王の表情が険しくなる。
「わかっているか?その意味を、魔物は危険だ。そして、儂は国王だ。国王は民の命を預かる責任を負う。国王は民草の安全を守る義務がある。魔物は危険だ、たとえ子供であったとしてもそれは同じだ。まさか、小さな命を奪うのははばかられるからと、魔物でも子供の命を奪うのは可哀想だと、そんな浅はかな考えで連れてきたのではあるまいな?」
ストリクス王は自分らを責め立てる。この言及は自明の理だった。
「王様、確かに自分はそのような考えで二匹を連れ帰って来ました。しかし、人々を護る勇者であるからこそ、自分たちには彼らに関して責任が持てると思っています。それに足る力を持っていると考えています。どうかお許しください。」
コウイチは斯く言う。
それにストリクス王は少し驚いたような
「『責任が持てる』、と。勇者よ、その言葉に偽りは無いか?」
「はい!!」
「当たり前だっ!!」
「頑張ります!!」
ストリクス王は三人を流れる様に見た。
くるりとこちらに首を向ける。
「二人も良いか?」
左右を横目で見る。
肯定派の三人は期待に満ちた眼で、イクコは......別の意味で期待を込めた眼でこちらを見る。
謝罪と諦めの意を含んだ眼でイクコへとアイコンタクトを送る。
どうやら意を汲んでくれたらしく、はぁ、と溜息を着き諦めの表情を見せた。
「はい。どうやら納得せざるを得ない様ですので。ですが、仲間の連帯責任と言うものです。最後までやり遂げて見せましょう。」
ストリクス王はニカリと笑う。
「相解った。ならば勇者よ。その言葉嘘妄言の類で無いと信じよう!!王城の庭の一部を貸そう。誰一人の被害なしに世話をしきって見せよ!!」
「ありがとうございます!!」
その日の昼には、王城内の庭の一角には既に立派な囲いが出来ており、二匹のキバうりぼうが陽の光の下で昼寝をしていたそう。
ーー その夜 貴賓室周辺廊下 ーー
数日ぶりの料理長のご馳走の後、女性陣が入浴してる間、自分は窓から城下町の夜景を楽しんでいた。
すると、スッ、スッと紙を擦るような音が近づいてくる。
振り向くと、音の主フレイアが風呂上がりのふんわりとした寝間着姿でいた。どうやら紙を擦る音はスリッパだったらしい。
「暫くぶりですね、フレイアさん。」
「はい。無事に戻られて嬉しいですユキヤ様。」
「今更『様』を付けなくても大丈夫ですよ。」
「では改めて、ユキヤさん、無事に戻って来てくれてありがとうございます。」
暫く二人窓の外を眺める静かな時間が流れた。
「上、登りますか?」
フレイアは訊ねる。
「はい。折角なので......」
「ではまた御手を...」
「いえ、見ててください!」
自分は手を掛け身を乗り出し窓から飛び出す。
真っ逆さまに落ちるはずの身体は空中で踏ん張る足に支えられ静止する。
冬を前にする高所の風が冷たく頬や首筋を通る。
「凄い、もうそこまで......」
「頑張ったんですよ。毎日練習しました。」
実はノニ山まで依頼を受けに行った時も合間を見て練習していたのであった。あの日の夜空が忘れられ無くて。
フレイアも窓から飛び出してスイスイと飛んで屋根まで飛んで行く。自分も追ってフレイヤのいる屋根まで登って行こうとするが.........
「うわあぁ!?」
《
「ぁぁぁああああ!!!!」
魔法を使わなければ上に昇ったなら当然下に落ちる。当然の様に文字通り加速度的に落下する。
王城の屋根が視界いっぱいに広がった時、ふわりと落下の勢いが空中で消える。
そのままふわりふわりと飛んでフレイアの腕の中に自分の身体が収まる。
柔らかく包む感触と花と石鹸の香りが心地好い。
「まだまだですね。」
と、フレイアは優しく囁く。
「精進します......」
幼く戻った気がし気恥ずかしくて、いそいそと腕の中から抜け出す。
オレンジ色がポツポツと着いたり消えたりする。
空は満天、月は上弦の半月。
風の音だけが聴こえる。
「そういえばですけどユキヤさん、実はあの後陛下嬉しそうに二匹のキバうりぼうを見ていらしたんですよ。」
「え?そうなんですか?意外だなあ。」
ふふっ、くすくすっと笑い声が行き交う。
「そういえばついでにフレイアさん。一つお願いがあります。」
「なんでしょうか?」
小首を傾げる。
「陛下とお話がしたいのですが掛け合って貰えませんか?」
自分の要望にフレイアが唸る。
「一応...掛け合って見ます。」
「!宜しくお願いします!!」
真相を知る為に。
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