第29話

 ーー 辺獄の地下迷宮 地下十階への階段 ーー


 ミミックゴーレムを倒した後、八階、九階と進んで来たが特に代わり映えする事も無かった。強いて言うなれば階を進むにつれてゴーレムの武装が増えた位のこと。


「遂に十階まで来たのか。」

 少しだけ感傷に浸って扉に手を掛ける。



 ーー 辺獄の地下迷宮 地下十階 ーー


 扉を開けた先は大広間。八階みたいに宝箱が置かれていることも無い。ただ部屋の反対側に扉が有るだけ。


「何も無い?ただの広いだけの部屋ってか?」

「マスター、気を付けてください。」

「何が?」


 突然天井から土煙を巻き上げて巨大な何かが降りてきた。


「この辺獄の地下迷宮には十階毎に試練主、平たく言うとボスが出現します。ただしボスのデータを当機は持っておりません。」


 俺達の目の前に現れたのは今までのどんな奴よりも数段大きいゴーレムだった。

 その体は今までのゴーレムの中で体型は細く、一番人型に近い。

 しかし、その表面の黒光りは今までのゴーレムよりも重く見るだけでその硬さが他のゴーレムとは一線越えて二線も三線も画していることが分かる。

 また武装として持っている黒剣も恐らく俺が持っているものよりも丈夫で切れ味も良いのだろう。


「剣で勝てるのかよこんなやつ!」

「対大型機用の武装を展開します。《パズレイヴ・バスタードーθ》展開...完了。」

 フィリアは光の片刃を持つ大剣を衣装箱ドレッサーから呼び出しその手に握った。


「来るぞ!!」

 巨大剣士ゴーレムは剣を振り下ろす。そこまでのキレは無いがその質量と速さだけでも十分な脅威だ。


当機が受けます!!」

 フィリアはパズレイヴ・バスタードーθを両手で横に構え巨大ゴーレムの剣を十字に迎える。

 二つの剣が交差した、その瞬間周囲に衝撃が渡る。


「おおお!き、拮抗している!?」

「んぐ......ん。」


 二本の剣はその角度が変わることは無い。

 しかし、何分体格差が大きい。フィリアの足は徐々に後ろに滑る。

 このままでは.........!!


「そぉこまでだあああぁ!!!!」

 俺は黒剣と聖剣を手に剣士ゴーレムへと駆け出す。


「きゃあ!!」

「フィリア!!」

 剣士ゴーレムはフィリアを剣ごと弾き飛ばし壁に叩きつけた。

 そしてゴーレムの剣は黒剣は勢いそのままに横薙ぎに俺への距離を詰めていく。


「おっらあ!!!!」

 俺は両手の剣で正面から受け止める。

 互いの剣は右へ左へ、前へ後ろへ、上に下にと押し切れない硬直が続く。


「隙あり!!.........な!?」

 フィリアがパズレイヴ・バスタードを翳して突撃するも剣士ゴーレムの反対の手で刃を掴まれ防がれる。

 そして今度はパズレイヴ・バスタードをフィリアから取り上げ中に取り残されたフィリアへと裏拳を叩き込む。

 フィリアは殴られて飛んでいきまた壁へと叩きつけられる。凹んだ壁の瓦礫から見えた彼女はゴシックドレスが所々破け、稀に無機物の肌から金属が垣間見えていた。

 壁に衝突した衝撃で目は開いているもののピクピクと痙攣したような動きしか出来ておらず苦痛の表情を浮かべている。


「ます......たー。す、ませ......ん。」

「フィリアアアアァ゛!!!!てめぇよくもオオォォ!!!!」


 怒りのままに聖剣と黒剣に闇の魔力を流し込む。剣に宿った闇の力は剣の周りに留まらず、巨大な剣の様に見えた。

 だがそれでもその大きさはゴーレムに黒剣の半分程。それでも二本の剣を、動きの綺麗さなんて気にもかけない、オーバーワークな動きで振るう。一度目で剣士ゴーレムの剣を弾き、二度目で剣士ゴーレムの身体へと斬撃を飛ばす。

 剣士ゴーレムは急いで自らの黒剣で防ぐが勢い殺し切れず後方に飛ばされる。

 剣士ゴーレムがその巨体を倒し土煙を巻き起こす。

 暫くぶりの静寂が大広間に訪れた。


「ハァ、ハァ......勝った?......フィリア!!」

「マスター!!」


 フィリアへと叫ぶ。フィリアが叫ぶ。


 俺の叫びは歓喜に満ちていた。


 が、フィリアの叫びは必死そうだった。



 瞬間、土煙が揺れる。

 大きな影が大きく跳び上がった。

 影の正体、剣士ゴーレムは縦一文字に俺へと斬り掛かる。


「マスター!!!!」




TO BE CONTINUED EP3......

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る