ANOTHER SIDE:クロト EP2

第27話

 ーー 辺獄へんごくの地下迷宮 地下七階 ーー


「こんな所に女の子!?」


 放り込まれた辺獄の地下迷宮も地下七回まで来ていた。その一室、機械に繋がれていた少女がいた。機械の絡むその肢体には一片の布も無く、蓮の茎の様に灘らかな身体の曲線が空気に晒されている。

 慌てて目を逸らす。


「ど、どど、どうにかして外さないと......」


 さして機械に強い自信はないが目の前の端末のボタンを押す。

 押した後に思ったが不味いボタンを押したかもしれないと、一瞬、血の気が引く。

 その内心とは裏腹に少女を拘束していた機器やコード、鎖の類が全て外れる。

 支えの無くなった少女の身体はこちら側に倒れるので両手で支える。

 腕の中の少女は人形の様な綺麗な顔立ちをしている。しかしよくよく見るとそれぞれの関節に細く隙間があった。

 驚いて全身を観察すると身体の細かい部分がオミットされていて、生殖器も無い。

 また肌は柔らかい乙女のそれだが手に伝わってくるのは無機物の冷たさ。


 少女は起き上がりゆっくりサファイアの様な瞳を開ける。

 これらから導き出される答えは即ち.........


思考封印機器絶縁機器:接続解除パージ:確認クリア《マギナリー・ドール》起動。」


 彼女はこのダンジョンで産まれる迷宮産魔物メイズモンスターでゴーレムの種類だ。

侵黒しんこくの聖剣》とゴーレムから落ちた黒剣を構える。


「起動ボタンの残存生体反応から検知.........完了。情報登録.........完了。低出力装備展開。」

 白黒のゴシックドレスが少女の体を覆う。


 少女はこちらを見た。


「おはようございます。起動者マスター。これより当機:クーフェリアは貴方の意のままに。」


 そのまま暫く思考が渋滞を起こしていた。



 ーー 凡そ十五分後 ーー


「つまり君はゴーレムタイプのレアモンスターで?」

「種族名はマギナリードールと言います。」

「起動者である俺の従者で?」

「はい。当機はマスターの従者、クーフェリアと申します。どうぞ宜しくお願いします。」

 クーフェリアは優雅且つ慎ましやかに一礼した。


「とりあえずクーフェリアはどんなことが出来るんだ?」

当機の主な使用方法は戦闘です。現在の単純に魔力の出力は、その剣を見た所、既に戦われたとは思いますが同階層に出現する《ヘヴィゴーレム大型フュージ》の五倍、強化やギアチェンジによって上昇します。」

「アイツの五倍.........しかも更に昇がるか。」

「また一般的な言語、作法、学習機能、簡易医術、家事全般のプログラムがインストールされています。それが当機の全機能となります。」

「かなりの高性能だな。姉妹、兄弟とかはいるのか?」

「居ません。マギナリードールは製造に凡そ五百年を要します。また、起動者が現れない限りそのままで、次は製造さ造られません。つまり、私が一号機長女であり、ここ五百年は妹も居ません。」


 突然背後から重い駆動音が鳴り出す。これからクーフェリアの妹を五百年の時をかけて造り始めるのだろう。


「にしてもクーフェリアは少し長いな.........そうだ!クーフェリア、俺はお前の事を少し縮めて《フィリア》と呼ぶ事にする。」

確認し判りました。マスターから当機の呼称識別は《フィリア》に変更します。」

「今の所確認する事は以上だ。さあ地獄の底まで進もうか!!」

了解ラジャー当機の道は貴方マスターの隣に。」


 俺達は再び稼働を始めた《マギナリードール》の生産プラントを後にした。

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