第25話

「ん〜勝った!!ビクトリー!!」

 アツシが勝利の喜びに伸びをする。


「アツシ、お前危なかっただろうが!!」

「す......スマンかったって......な?」

「アツシ......今回は本当に言い訳のしようが無かったと思うよ。」

「アレは今後NGね。」

「馬鹿猿。」

「拾う神は居ないのかー!!」


 皆、帰ろうとした所でふと思い出す。


「巣!巣穴を調べないと!!」

「キバイノシシはもう倒したろ?」

「まだ居るかもしれない。また被害が続いては意味が無い。」

「それもそっか。よし皆、兜の尾を締め直して行こう!!」

「「おー!!」」

 皆、勝利の喜びで浮かれているが.........



 ーー ノニ山、キバイノシシの巣穴前 ーー


「あ、勇者サマ方。皆さん無事なようで何よりっス。」

「あドーモ、フロロさん。ありがとうございます。」

「因みにお伝えして置かなければいけない事がひとつ。」

「どうかしました?」

「実は今のキバイノシシ、変異種ミュータント:有袋型マスピアーと言いまして強力な個体だったんス。」

「「え゛」」

「有袋型は主にエサが豊富な地域に見られる変異種で特徴としては通常個体ノーマよりも巨体で子育てやエサの運搬に使う袋を腹部に持つことなんスけど......いや〜勝てて良かった。あ、勿論負けるは無いと信じてたっスよ?」


「勝てて良かった〜。」

 イナホが衝撃と安堵を改めて実感して蕩ける様に腰を落とす。


「とゆーか、そう言う大事な事は先に言ってください。」

「すんませんって。実は気付いたの巣穴から出て来た時丁度で、その後騎士長に連絡してたんでス。」


 然々


「あ、そう言えば。キバイノシシの死体は持ってきたっスか?比較的多い型とは言え変異種ミュータントっスからその毛皮や牙、骨や肉は素材食材としてそこそこ高く売れるっスよ。」

「あ、そう言えば。死体倒したそのままだった。戻ろう。」

「あ、じゃあコッチで回収しとくっス。怠慢の贖いとでも思っといて下さい。」

「ありがとうございます。じゃあ俺達は素の調査に行こうか。」



 ーー ノニ山、キバイノシシの巣穴内部 ーー


 巣穴は流石、あの変異種キバイノシシが住んでるだけあって広い造りになっていた。


「最奥に着いたな。餌は......大分残ってるな。今なら納得だ。袋に入れて食料を持って帰って来たんだろうな。」

「謎が解けたね。これでスッキリ。」

「どうせだし無事な食料は持って帰ろう。これだけあれば全く手を付けていない物も有るだろうし。」

「ナイスアイディアだ!手分けして持って行こうぜ。早速この干し肉は.........お?」

「どうした?アツシ.........これは!」


 コウイチとアツシが食料にかけられた藁を捲り、固まっていた。

 そこには .........

「ピギーー!!」

「プグググ.........」


 二匹の小さなキバイノシシ、人呼んでキバうりぼうが隠されていた。

 その体長はかなり小さく前後に三〜四十センチ程しかない。親であろう先程のキバイノシシから見ると、拍子抜けも中々、寧ろ可愛らしい迄ある。


「プギギー!!」

「ブグ......」

 否、普通に可愛い。しかし.........


「殺すしかないよね.........」

 ボソリと呟く。


「「え!?」」

「何言ってんだよユキヤァ!!」

「.........」

 三人は驚愕、イクコは無反応であった。


「まだこんなに小さな子供達じゃないか。殺すのは余りに可愛そうだ。」

「そうよ、こんなに可愛いのに。」

「そーだ、そーだ!!」

 これが三人の意見である。


 それに対し自分は論を展開する。

「それじゃあどうする?このまま放っておいたらさっき倒したキバイノシシの事件と同じことが起こる。」

「う゛」

「更に仮に村に被害が出ないとしてもキバイノシシは魔物、その力は強い。生態系を大きく揺るがすだろう。」

「ぐぬ」

「更に更にこのまま放って置いて村の人達に見つかったら激闘の末恐らく殺される。守ってくれて育ててくれる親もいない。そっちの方が可哀想じゃない?」

「い、イクコちゃんは......」

「あら、私はユキヤに賛成よ。明らかに筋が通っているのはどちらかしら?明白じゃない。方や唯の自己正義エゴイズム、方や理論の通った合理主義セオリズム。私がどちらの主張を支持するかなんて言うまでもないわ。」

「.........」


 自分らの主張を唯のエゴイズムと切り捨てられ三人は黙る。

 一応なるかどうかは分からないけどフォローは入れておこう。


「勘違いはしないで欲しいけど別に可愛くないとか殺したいとか考えてる訳では無いんだ。これは栄誉ある決闘でもなんでもないんだ。これは、そう。唯の生存戦争、唯の弱肉強食の原理なんだ。分かって......」

「......そうだ!!分かった!!」

「ん?」

「この二匹のキバうりぼう、俺達で飼おう!!そうすれば問題を解決出来る!!な!!」

 コウイチが名案とばかりに叫ぶ。


 マジっすか。


「なるほどなるほど......名案じゃない!!さっすがコウイチ!!」

「あ、ああ。ああそうだ!!それならいいじゃんかよ!!なあ、ユキヤ!?」

「へ?ええええ!?」


 期待の眼差しを受け言葉に詰る。


 一呼吸入れる。


「コホン......問題がある。まず街中に連れていくなんて危険に過ぎる。」

「俺達はそもそも超人の力を持つ勇者たちだ。キバイノシシの二匹、押さえてみせるさ。」

「最後まで面倒見切れるの!?」

「問題ねえ!!」

 アツシが啖呵を切る。


 ハア、と一つ溜息を付く。

「仕方ない......解ったよ。ハア......」

「やったー!!堅物ユキヤを認めさせたー!!」

「ピー!!ピー!!」

「ブゥ......」




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