第19話
服屋で好き勝手にされた自分達二人は自分の目的地である金物屋を目指していた。その途中...
「ン〜まい!!おっちゃんのプレートヌードル(洋風の焼きそばのようなもの)最っ高だぜ!!」
「流石、火の勇者サマは食いっぷりが違うねえ!!どれ、も一つどーだい。」
「貰うぜおっちゃん!!十五ウィットだな。」
「アツシ様の食いっぷりに免じて十ウィットでいいぞ 。」
「あの馬鹿は何をやっているのかしら。」
「見ての通りの屋台飯、かなあ。」
焼きそば(に似たもの)を馬鹿食いしているアツシは大きな荷物を持っている様子も無い。冒険グッズを揃えると言っていたが恐らく食べる事に夢中で行けていないのだろう。
「ちょっと声掛けてくる。」
「いえ、いいわ。私が行ってくる。」
イクコは夢中になってプレートヌードルを食べているアツシに近寄っていく。
そして膝裏に回し蹴りを放つ。
強制的に膝を曲げられ勢いよく膝から上が落ち手からプレートヌードルが飛んで行く。勿体ないので跳んで全て空中で回収する。
一寸味見。
「うーんイタリアンっぽい味と食感、懐かしいなあ学園祭の模擬店で食べたなあ。」
「いつつ......何しやがんだコノ!!って、チビッ娘!!あとユキヤ!!何でお前らがここにぃぐへッ!!」
アツシの仰向けになっている腹部をイクコが踏む。体重は軽そうなので胃の中が返る程のダメージは無い。
「その低脳、且つ屈辱的な呼び方は止めなさい。」
「あと僕達は服を買って次の目的地を目指してる所かな。」
「馬鹿猿、貴方は意気揚々と冒険用具を買いに行ったわよねぇ?まさか何時間も買い食いしてた訳じゃ無いわよね?」
「町の経済を回していたんだ!!」
「見苦しい。」
「痛え!!」
「まあまあ町の人達困ってるから。ね、行く所に行こう。」
ーー 二十分後、金物屋店内 ーー
「うーん、包丁はどれがいいかな?」
「ンなもん切れれば一緒だろ。」
「馬鹿なの?あ、馬鹿だったわね。」
「うっせえ!!」
自分達はショーケースの中に入った包丁を眺めている。
「手に取って見るかい?」
ガタイの良い作業着にエプロン姿の男が来て言った。
「良いんですか!?」
「じゃねえと分からんだろう。」
「ありがとうございます!!」
「何、これも商売さ。言うのが遅れたが俺はこの《金物のギコ》の鍛冶師兼店主のギコだ。宜しくな。」
「ユキヤです。こちらこそよろしくお願いします。」
「ちょっと待ってな。今、開ける、から、よし開いた。気になったの取ってみな。」
さっきから気になっていた厚めの出刃を手に取ってみる。よくよく見てみると先が少し研ぎが甘く均一でない。
矢張、手に取って見ないと善し悪しは判りづらい。
結局買ったのは洋出刃と菜切と果物ナイフ。それと
値段は合計八百ウィット。ついでに小さめなまな板も付けて貰った。
「毎度あり!!今後ともご贔屓に、ってな!!」
「いい買い物でした。また今度来ます!」
ーー 夕方、帰路 ーー
「まさかポーションが日持ちしないなんてね。」
「ああ、ストレージの中に沢山入れてるイメージだったんだけどな。」
「ここはゲームの世界じゃないってことよ。保存用のポーチを買えただけまだマシだとでも思っておきなさい。」
今は冒険者の
「あ、そういえばこれ。」
「うん?薔薇の髪留め?私に?」
「うん誘ってくれたお礼。楽しかったよ。ありがとうイクコちゃん。」
「だからちゃん付けは止めなさいと言っているでしょう!まあ、今回は気の利いたプレゼントに免じて許してあげるわ。今度から気をつけなさい。」
因みにこの後、城門でリヤカーに大量の衣服の入った化粧箱を引いた《仕立屋アクリス》の女性従業員を目撃した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます