第17話

 ーーパレードの翌日、城内訓練場ーー


「剣の練習を始めて暫くしましたがユキヤ様の剣は変わりませんね。初めてで形が分からないのかとも思いましたが、何か武術でもやられていたのですか?」


 ジゼルは自分の剣術について尋ねた。


「はい、僕の家は厳格な家柄で芸術や武道などは幼い頃から習わされてたんです。」

「道理で......」


 剣術の他にも合気道、華道、習字、琴、手芸など様々なことをやらされた。全てが程々だが。


「それじゃあ一寸勇者様同士で手合わせして貰いましょう。リンダ、アツシ様を呼んできて。」

「はっ。」


 丁度近くに居たリンダは嫌な顔1つせず父の言ったことを素直に聞く。リンダが素直なのか 、それともこの世界は一昔前の前世の世界と同じ様に家長の言が大きいのか。

 そんな事を少し考える。


「そういえばジゼルさんは騎士団で最も強いと聞きましたが、一寸稽古付けて貰っても良いですか?」

「私が?付けて差し上げたいのは山々なんですけどリンダも直ぐに戻るでしょうし......じゃあ軽く一分だけにしておきましょう。」

「ありがとうございます!!」


 自分の腕に自信がある訳では無いが、ただジゼルの、この国の最強を見てみたいと思った。


「ではこの石が地に落ちたらスタートしましょう。」

「分かりました。」


 ジゼルは訓練場の端っこの方に落ちている石ころを一つ直上に放り投げる。


(三...二...一...来る!!)


 剣を中段に構える。ジゼルの剣の動きを見てに入る。


(視えた!!右斜めからの斬り下し!!)


 発切とジゼルの剣の動きが視え、それに合わせ攻めに転じやすい様に剣先を下にした防御姿勢をとる。

 そしてジゼルの剣が自分の剣に当たろうとする時に剣を滑らせるように上へ持っていく。

 ジゼルの剣は勢いを下に流され大きく体勢を崩し、大きな隙ができる。


 筈だった。


「なっ!」


 ジゼルの剣は自分が防いだ方の反対側の首に添えられていた。


「私の勝ちです。」

「な......何が起こったんだ?」


 確かに剣は自分の右側にあった筈だった。ちゃんと見えていた筈だ。


「うん、今後もこの調子で励んでください。」

「あ、ありがとうございました......」


 ここまで差があると悔しいよりもいっそ清々しくすらあって笑えてくる。


(遠いなあ、自分達はあれを超えなきゃいけないのか。一体あの域迄行くと世界はどんな風に見えるんだろう。)


「......遠いなあ。」

「おーうお待たせ、ってどうかしたか?」

「いや、別に何となく楽しくなってきたんだよ。」

「?まあ楽しいならそれでいいけど......」


 早くあんな風になりたい。そんな気持ちで今は一寸ワクワクしていた。


 ジゼルが今度は剣ではなく手旗を掲げる。

「では御二方、位置について!!」


「悪いけどアツシ、一寸負けた腹いせに付き合って貰うよ。」

「おお?」


 それぞれ直剣と大剣を構える。


「稽古、始め!!」

「うおおらあああ!!!!」

 アツシは大剣を振りかぶって直線に距離を詰める。そして大剣の間合いに大きく入った辺りから力一杯に振り下ろす。

 自分はそれを先程と同じ様に勢いを流す様に防ぐ。


「ぐっ、重い。けど!!」


 ジゼルと違い剣に当たった。そして剣は矢鱈と込められた力に耐えた。


「うおお!?」


 いなされた大剣は勢いそのままに地に自分の後方下に流れていく。

 最大級の隙が出来た 。


「アツシ、僕の勝ちだ。」


 背中に掌底を添え、強めに押す。


「ギャフン!!」

 アツシは肺から空気を出されて空気の多く出た様な声を出しながら二〜三メートル吹っ飛ぶ。


「ユキヤ様の勝ち!!」


 一寸力を入れ過ぎたかもしれないと、伸びてるアツシを見て思った。


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