勇者伝説胎動

第16話

 ーー翌日、城下町ーー


「勇者様ー!!」

「ようこそククリアへ〜!!」

「可愛いいいい♡!!」


 自分達五人は山車の様な乗り物に乗せられて、城下町のメインストリートを下っている。

 皆(アツシを除く)は草臥れた表情を浮かべる。


 今日は勇者召喚から五日後、この世界では一週間は五日、祝い事は五日後に行うのがこの世界の慣わしらしい。


「コウイチ様ー!!世界をお願いしまーす!!」

「うおー!!アツシ様ー!!」

「イクコ様あああ!!!!こっち向いてええええ!!!!」




 ーー 一日前、ククリア城 小会議室 ーー


「明日の召喚祝賀パレードに備えて、今日は早めに寝ること。」

「「召喚祝いパレード!?」」

「あれ、言ってなかったっけ☆」

「言ってねえよ!!」


 日本でのスポーツ選手の凱旋パレードを思い浮かべる。沢山の人に囲まれている絵を想像するだけで疲れる。


「なんで一々パレードなんてやるんだよ。」

「六勇者は人々の希望、民衆の光なんだよ。皆、勇者を見て元気になるんだ。それと勇者が居ることを公表する事で、君達が他の国のサポートを受けやすくする意味もあるね。」

「理屈を並べられても納得出来ないモノもあんのー!」

「町の人から結構 寄付品貰い物もあると思うよー、お菓子とか食品とか。」

「ったく、しかたねーな。」



 ーー そして現在に戻る ーー



「おいユキヤ!!めっちゃ肉とパン貰ったぜ!!」

「よ、良かったね。僕は本とか硬貨とか食品とか色々貰ったよ。」

「俺も色々貰ったな。何かお礼をした方がいいかな。」

「あ、私も賛成!!これだけ貰ったんだもんね。」

「......まあ、印象良くしておくのも良いかもしれないわね。」


 イクコは花やぬいぐるみやお菓子類が多くて心無しかいつもより嬉しそうに見える。


「じゃあオレから行くぞ!!」

 アツシは腰から聖剣を抜き、空を突いた。


「みんなー!!ありがとーーう!!!!」


 空を割らんとする叫び声に聖剣が反応し、天に火柱が上がる。


「「うおおおお!!!!」」


 町の人達は歓喜に湧く。


「なら俺も!!」


 コウイチも聖剣を掲げる。そして天に一直線に光を放ち、雲に小さいが太陽の光が直に届く様な穴を開ける。


「「わあああああ!!!!!!」」


 流石、一番人気の光の勇者は違うらしい。


「じゃあ私も!!」


 イナホは右の掌を翳す。雷が上に放射され途中で枝分かれして一本の大樹を描く。


「わあっ」


 人々は前の二人の時より静かだがより魅入っている様だ。


「よし、そしたら僕は......」


 自分は氷雹ひょうびょうの聖剣を二センチ程だけ抜く。

(魔法触媒として氷雹の聖剣を使って『氷』を付与、『念動サイコキネス』『造形シェイプ:小鳥』で.........)


「学んだことを活かす、『四十雀シジュウカラ』。」


 右の手の人差し指に小さな氷の鳥を創る。

「行って。」

『四十雀』を飛ばす。

「おおっ」と人達は驚きの声を上げる。


『四十雀』は自分の乗っている山車の周りを三度廻って空へと登っていき、空中で弾け辺りに僅かに雪を降らせた。

 人達はパチパチと拍手をする。



「私がトリなの?まあ、良いわ。」


 イクコは市民達から投げられた一本のピンク色の花を舞台の中央に飾る。

 新緑しんりょくの聖剣を手に取り『生命ライフ』を付与、『巨大ヒュージ』『変性チェンジ』を加える。


「咲け、『大輪:富士芍薬ふじしゃくやく』。」


 一本のちっぽけで愛づらかなピンクの花はみるみる膨れ上がるように伸びて樹の幹程もある巨大な富士咲の芍薬になった。


 ククリアの市民達もパレードの役員も、実は遠くから見ていた貴族達も、その神秘的な光景に言葉を無くす。


「これオレ達の印象薄くならないか?」

「まあ仕方ないんじゃない?何の工夫も無かったし。」


 イクコは自分達に向かって勝ち誇った様な顔をしていた。


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